労働事件裁判例のご紹介④

実際の労働事件の裁判例を紹介するシリーズの第4回目です。

近時における、会社の主張が認められた裁判例を紹介しますので、皆様の労務管理の参考としていただけますと幸いです。

 

今回は、会社が人事考課に基づいて一部の従業員に対して行った降格処分について、これが適法であると認められた事件です(東京地裁令和4.1.31)。

 

【裁判の概要】
本件の会社は、就業規則において降格処分について定め、定期的に行われる人事考課の内容に基づいて、降格基準に該当する従業員を降格処分としていました。降格された従業員が、人事考課制度が不適切で降格処分は違法であるとして、訴訟を提起して争ったというものです。

【裁判所の判断】
これに対して裁判所は、本件での人事考課の内容は適正であり、降格処分も適法であると判断しました。

【ポイント】
本件で裁判所は、降格処分の適法性を判断するにあたり、処分の前提となる人事考課制度の合理性について検討を加えています。

その上で、本件での人事考課制度には、能力を評価するために求められる活動内容が明確かつ具体的に定められていたこと(例えば「業務遂行にあたって部下に指導しながら自らも主体的かつ積極的に取り組めているか」など)を評価し、その合理性を肯定しました。
その上で、降格処分も、合理性のある人事考課制度に基づいてなされたものという点を評価し、適法であると判断しています。

 

このように、本件では処分の前提となる人事考課制度の合理性が、とても重要な意義を持っていました。
会社によっては、人事考課制度を設けているものの、その基準が抽象的で分かりにくいものとなっていることもあるかもしれません。会社としては、可能な限り具体的な評価基準を設けておくことが望ましいでしょう。

 

Atty’s  chat

先週の連休は、箱根へ紅葉狩りへ行ってきました。時期はよく天気にも恵まれたため、素晴らしい紅葉を愛でることができました。ただ、その分道は大混雑で、普通ならバスで15分ほどの箱根湯本まで戻るのに、2時間以上かかったのにまいりました。バスを捨てて歩いて帰った方が早かったかもしれません。                         (2025年11月28日  文責:越田 洋介)