【労働裁判例を知り、会社を守る!】第12回 「管理監督者」だから割増賃金を支給していなかった・・・?

今回は「管理監督者だからと割増賃金を支給していなかったが、そもそもその者は管理監督者にあたらず、割増賃金は発生していた」と判断された裁判例(東京地判平成20年1月28日判決)。
この会社は、ファストフードチェーン店等を営む会社です。
 ある店舗の店長は「管理監督者」であることを理由に、時間外割増賃金や休日割増賃金を支給されていませんでした。
管理監督者は、監督若しくは管理の地位にある者(労基法41条2号)と定義されています。そして、管理監督者は、時間外割増賃金と休日割増賃金が発生しないこととされています。
 この店長は「自分は管理監督者に該当しないため、割増賃金が発生するはずであり、それが未払いになっている」として、会社に対して訴訟を提起しました。
 裁判所の判断は、上記のとおり、この店長は管理監督者に該当せず、割増賃金も発生しており未払になっているとして、会社に対して合計750万円の支払を命じました。
会社が敗訴した、つまり管理監督者性が否定された理由は何でしょうか?
大きく3つに分けると、以下の事情が重要視されています。
①従業員のシフト管理などの一定の権限はあったが、会社の経営方針決定には何らの権限も無かったこと。
②実質的には、自分の勤務時間について、ほとんど裁量が無い状況となっていた。
③年収が、評価により580万円~700万円であり、固定給性となっていた部下の年収600万円と逆転する場合があったこと。

 以上をまとめると、管理監督者に該当すると言えるためには「会社経営に一定の裁量があること」「自己の勤務時間について裁量があること」「賃金などの待遇で一般従業員よりも高い待遇を受けていること」などの条件が揃う必要があるのですね。

 ちなみに、この裁判例は超有名ですが、他にも飲食店店長の管理監督者性が争われた裁判例は数多く存在し、そのほとんどで管理監督者性が否定されており、そのハードルの高さがうかがえます。

 

弁護士の徒然草

ハンバーガー、ポテト、そしてチキンナゲット…など、ファストフードは、あまり身体に良くないとはわかっていても、やはり定期的に食べてしまいます!
ただ最近は、メニューのカロリーやたんぱく質などの栄養価表を見て、少しでも高たんぱく低脂質のものを選ぶなど、悪あがきをしています。                                                                                    (2025年8月19日  文責:佐山 洸二郎)