会社経営者・社長の離婚について
1 他の離婚問題とは、何が違う?!〜会社経営者だからこその離婚問題〜
夫婦の一方が会社経営者の場合には、離婚で考えなければならない特有の問題があります。
たとえば、会社を経営していると、妻(夫)が役員や従業員として会社の経営に関わっていることが考えられますよね。離婚するとなると、お互い同じ会社にいるというのは気まずかったりするため、離婚後に会社での立場をどうするのか考えなくてはならないでしょう。
また、会社経営者であると、一般的に年収(役員報酬)が高いうえ、保有する財産の種類も多岐にわたります。財産がたくさんある方の離婚となると、財産をどう2人で分けていくか(財産分与)について、紛争となりやすい傾向にあるのです。
そこで、会社経営者の離婚に関して①相手が会社経営に関わっている場合について、②財産をどう分けるかについて の2点を説明させていただきます。
2 離婚後も一緒に働くのは…
~離婚と会社の地位は別~
「妻(夫)が自分の経営する会社の従業員・役員ですが、離婚時に解雇・解任することができるのか?」
(1)妻(夫)が従業員だった場合について
会社を経営されている場合、自分の妻や夫を従業員として雇用しているケースは多いかと思います。このような場合、離婚した後でも、当事者が同じ会社にいるというのは、当事者同士も、他の従業員の方にとっても気まずいということがあるでしょう。
しかし、離婚のみを理由として解雇することは基本的にできません。離婚と会社での立場は、別個の法律関係となるからです。
ここで、感情的になって無理に解雇してしまうと、離婚とは別に労働訴訟に発展してしまうおそれもあります。
感情的になって、すぐに「解雇!」と勢いづくのではなく、相手も同じ職場で継続して働くのは、負担になります。まずは、相手方と良く話し合い解決の方向を探ることとなります。
離婚にあたり、妻(夫)の退職を望まれる場合は、労働関係の法律を踏まえて対応する必要がある上、当時者同士では感情的になりやすいので、専門家に相談し、話し合いを行うことが賢明でしょう。
(2)妻(夫)が会社役員だった場合について
役員に妻や夫(親族等)がいることも非常に多いと思います。
離婚した後に、役員として経営権の一部を持った状態が続くというのは気分のいい話ではないでしょうし、会社の経営についての意見も過剰に対立し、会社の経営が滞ってしまうということもあり得ます。一方で、離婚後も役員のままであれば、会社経営の責任(損害賠償等)を必要以上に、負わされるかもしれないというのも不安でしょう。
ただ、役員の地位から退いてもらうには、解任請求を行わねばなりませんが、そのためには一定の株式を有していることが必要になりますし、離婚だけを理由に解任すれば、それは不当な理由だと損害賠償請求を受けることになりかねません。
また、親族が役員となっている場合などには、離婚後の配偶者が株式を有しているケースも多いです。この場合、会社の経営を巡って新たな紛争になりかねません。会社の組織は、株式による多数決が行われますが、その中で、離婚が元で過剰な意見対立が起こりかねないからですね。配偶者が会社の役員、株主であれば、株式について、一層慎重に協議を行う必要があります。
一方の配偶者が役員、株主であるような場合には、単に離婚協議を行うのではなく、会社の運営を停滞させたくないためにも、会社経営に精通した専門家に相談される方が良いでしょう。
3 なにを分けたらいいのか?!〜会社財産・個人の財産の扱い〜
(1)会社名義の財産について
「会社名義の車や携帯電話を使っていましたが、離婚したらどうなりますか?」
会社の財産と個人の財産は、別のものであるため、離婚したときには、会社名義の財産は会社に返還しなければいけません。会社から離れる方からすると、普段使っているものを取り上げられるような形になりますが、本来は会社の物を使用していることになりますので、やむをえません。
ただ、会社の財産といえるのか、個人の財産といえるのか微妙なものもあるかと思います。
判断に迷われるとき、契約をきちんと交わして、後々のリスクを回避するなど、専門家に相談することをお勧めします。
(2)株式について
「経営する会社の株式も財産分与の対象になるのですか?」
会社株式は、個人の所有するものであるため、離婚時に2人の財産として分ける対象になることもあり得ます。まずは会社の株式が2人の財産であるのか、2人の財産であるとして、離婚時に相手に株式を持たせてしまっていいのかなどの問題を検討する必要が生じます。
株式は、会社の経営を大きく左右するものであるから、意見の対立する2人が株式の大部分を所有していると会社の運営が滞りかねません。
離婚後、会社の運営をどちらが主体となっておこなっていくのか、しっかりと話し合って、株式についての協議を行う必要があります。
特に株式の帰趨については、会社の存続にも関わる問題になりかねないため、ご心配な方は専門家へ相談すべきといえます。
(3)分け方、割合の問題
「財産分与は、必ず2分の1ずつに分けるのでしょうか?」
財産分与は、夫婦双方が2分の1ずつ分けるのが原則となっています。しかし、経営者の中には、自分の才覚により築いた財産を経営に関与していなかった相手に半分も渡さないといけないのは納得がいかない、という方も多くいらっしゃいます。
この場合、現在の財産をいかにして築き上げたのか、資産の内容、その中で相手方はどの程度貢献したのかなど様々な事情を考慮し、その結果、2分の1の割合が変わる場合があります。
他にも、会社経営者の離婚には、紛争に発展するかもしれない問題も多々ありますので、問題が大きくなる前に専門家に一度ご相談ください。
弊所では、数多くの会社経営者の方をサポートしておりますので、
会社経営者の方の特有の問題を見据えて離婚問題の解決にあたることができます。
会社関係の調整は、通常の離婚よりも早期の調整が必要となりますので、
「困ったな。」と思ったら、まずは早期に弊所にご相談ください!