【労働裁判例を知り、会社を守る!】第14回 無許可残業であっても給与が発生する・・・?

今回は、無許可残業であっても給与が発生すると判断された裁判例(大阪高裁平成17年12月1日判決)をご紹介します。
この会社は、工業用ゴム製品・合成樹脂製品の販売等を行っている会社でした。
 ある従業員が、頻繁に午後10時から午前4時頃まで残業を行っていたことを理由として「その時間の給与が未払である」と主張して、会社に対して支払いを請求する裁判を起こしました。
 裁判所は、この残業時間も労働時間に該当するから給与が発生すると認定し、会社に対して従業員への支払を命じました。
 この会社では残業は許可制になっており、上記の残業は無許可残業でした…それなのに、なぜ労働時間に該当すると認められてしまったのでしょうか?

ポイントは2点あります。
 まず1点目が、「タイムカード等による出退勤管理をしていなかった」ことが挙げられています。
会社側で労働時間を適切に把握できていなかったので、「本当はその時間は働いていなかったはずだ」という反論が出来なかったのですね。
 2点目として「無許可残業をしていることを把握していたのに放置していた」ことが重要なポイントとして挙げられています。
残業を許可制にしておいたというだけでは不十分で、実際に、無許可で残業をしている従業員がいるのであれば速やかに帰宅を促すなどの行為が必要なのですね。

 従業員がいつまで残業していたか、そしてその残業が本当に会社の業務に必要だったのかという点が争われる裁判はそれこそ無数にあります。

会社としては、タイムカード等でしっかり勤務時間管理をするとともに、残業は許可制にするだけでなく、その運用も適切に行っていなければ意味が無いということがわかる、重要な裁判例ですね。

弁護士の徒然草

ちなみにこの裁判例の会社では、従業員が会社内で読書をしたり、仕事と関係の無いパソコン操作をしたりと、業務とプライベートの境界線が曖昧になってしまっていたようです。
だからこそ残業の許可制がとられたのだと思いますが、それが適切に機能しなかったのですね。
…こういう裁判例を知れば知るほど、労務管理の大切さ、大変さが身に染みてわかります。

                                                                                                            (2025年11月11日  文責:佐山  洸二郎)