【事業承継編】高額な価格を提示してくれる会社がよいのか

前回は、競合他社とのシナジー効果を最大限に引き出せると確信している企業が、最も高い買収額を提示するというお話をしました。では、その最高額を提示した企業に売却するのが、常に最善の選択肢なのでしょうか?答えは必ずしも「イエス」ではありません。

売却先を選ぶ際、考慮すべき要素は大きく分けて2つあります。
① 「高値」を最優先する場合
企業再生の案件など、金融機関との調整で「できる限り高値で買い取ってもらうこと」が絶対条件となるケースです。この場合、選択肢は必然的に最高額を提示した企業に絞られます。
② 譲れない「希望」がある場合
「従業員の雇用を守ってほしい」「これまでの事業内容を維持してほしい」といった、金銭以外の希望がある場合はどうでしょう。買い手側がこうした希望にどこまで応じてくれるかが、選定の大きな決め手となります。
M&Aの仲介が「結婚相談所」に例えられるのは、このためです。単に「お金持ち」なだけでなく、「価値観が合うか」や「性格が良いか」といった要素も重要になります。売り手の譲れない希望を尊重しつつ、最高額に近い条件を提示してくれる買い手こそ、理想的な相手と言えるでしょう。

 

なお、「どんな業種の会社でも買収を検討します。現状はできる限り維持します。」と、一見非常に好条件を提示する企業も存在します。仲介会社からすれば、こうした柔軟な買い手は非常にありがたい存在です。しかし、なぜその企業が、業種を問わず買収を進めるのか、その真意を深く探る必要があります。場合によっては、今噂の「悪質な買い手」かもしれません。

次回の記事では、「悪質な買い手」に焦点を当て、異業種の企業を次々と買収しながら、最終的に会社から資産を抜き取ることだけが目的だった、という事例を通して、その巧妙な手口を解説します。

 

最近のへべれけ日記

今回は、神奈川・伊勢原のお酒である「雨降 生酛純米 辛口 亀の尾」を紹介します(四合瓶で2250円くらいです)。雨降といえば、ラーメン店のAFURIに商標侵害で訴えられたことでご存知の方がいらっしゃるかもしれません。フルーティーでジュースのような日本酒を醸しています。香りはうっすらバナナ。味は、精米90%とは思えないくらい、キレの良いお酒です。鳥の唐揚げなどと相性がよいと思います。ぜひお試しください!                  (2025年8月15日  文責:杉浦 智彦)