退職に関するトラブルについて(15)

今回は、退職時の「情報や物品の持ち出し」に関するトラブルと、会社としての対応についてご説明します。

近年は、業務で使っていたノートパソコンやスマートフォンのほか、USBメモリやクラウド経由で会社の資料・データを持ち出してしまうケースが少なくありません。特に顧客リストや営業資料、業務マニュアルなどが退職後に競合他社で使用された場合、重大な損失を招く可能性があります。

こうしたトラブルを防ぐには、退職時に貸与物の返却チェックリストを作成し、PC・スマホ等のデータ削除やアカウントの無効化を確実に行うことが大切です。
あわせて、退職後の秘密保持や会社の名誉毀損行為を禁止する誓約書を提出させておくと、一定のけん制効果が期待できます。

また、物品の返却やデータ削除が完了しても、クラウド共有や個人のメモアプリなどに情報が残っているケースもあります。
とくに在宅勤務を導入していた企業では、私物パソコンや外部ツールの使用履歴も確認しておくべきです。形式的な返却だけで安心せず、必要に応じて本人と確認の場を設けるなど、実質的な情報遮断を意識した対応が重要です。

もし退職後に情報の持ち出しが発覚した場合は、まずは事実確認を行い、本人に是正や削除を求めます。
応じない場合には、弁護士名での通知や損害賠償請求といった対応を検討することになりますが、過剰な対応は逆効果となることもあるため、慎重な判断が求められます。

いずれにしても、退職前からの準備と、日頃の情報管理の意識づけが最も重要な対策といえるでしょう。

 

日々の雑感

梅雨入りしたはずなのに、連日30度を超える暑さが続いています。かと思えば、今日と明日は久しぶりの雨予報。暑さと湿気で体力も奪われがちですが、皆さまもどうぞご自愛ください。                           (2025年6月25日 文責:下田 和宏)