労働事件裁判例のご紹介⑥

実際の労働事件の裁判例を紹介するシリーズの第6回目です。

近時における、会社の主張が認められた裁判例を紹介しますので、皆様の労務管理の参考としていただけますと幸いです。
今回は、会社が定年となった労働者を再雇用するに際して、これまで(定年前)と同じ労働条件で再雇用する義務はないとされた事件です(東京地判令和1.5.21)。
【裁判の概要】
労働者Xは、定年後の再雇用にあたって会社から、これまで従事してきた業務とは異なる業務を提案されたため、これを拒否しました。そのため会社はXを再雇用しなかったところ、Xが、これまでと同じ条件で再雇用されるべきだとして会社を訴えました。
【裁判所の判断】
これに対して裁判所は、会社は従前の業務や条件で再雇用する義務まではないとして、Xの主張を退けました。
【ポイント】
定年を定めている会社には、定年後再雇用など、高年齢の労働者の雇用を確保するための措置を講じる義務があります(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条)。
そして、会社が定年後再雇用の制度を置いている場合、再雇用の条件に合致した労働者については、これを再雇用する義務が生じると最高裁も判断しています(最判平成24.11.29)。
しかし、会社に求められるのは、あくまでも会社が規定した条件での再雇用であり、これまでと同じ条件で再雇用することまでは求められていません。
ましてや本件ではX自ら再雇用について拒否したという経緯もあるため、Xの主張が認められなかったのは当然といえるでしょう。

実務上、定年後再雇用の条件が問題となる場面は少なくありませんが、基本的には、会社の定めた条件で再雇用することが認められています。もっとも、定めた条件があまりにも不合理(例えば、業務内容はこれまでと変わりないのに、給与だけが大幅に減額されるなど)だと、そのような条件は無効となることもあります。そのため、バランスの取れた制度設計が重要となるでしょう。

 

Atty’s  chat

気がつけば今年も既に2か月が終わったという事実に、驚愕しています。この調子だと、気がつけば年末という事態もあり得そうです。“毎日が充実していると月日が経つのを早く感じる“という人もいますが、私の場合その線はなさそうです。意識を改めて日々を充実させたいと思いますが、急に頑張るのも体によくないので4月から本気を出そうと思います。

                                                                                                                     (2026年3月3日 文責:越田 洋介)