労働事件裁判例のご紹介⑧
実際の労働事件の裁判例を紹介するシリーズの第8回目です。近時における、会社の主張が認められた裁判例を紹介しますので、皆様の労務管理の参考としていただけますと幸いです。
今回は、会社においてセクハラ問題が起こってしまったものの、会社が適切な対応を講じたことで、被害者に対する会社の責任が否定された事案です(東京地判令和2.3.3)。
【裁判の概要】
労働者Xは、会社の懇親会において上司Aからプライベートでの食事を誘われたなどとして、会社に対してセクハラ被害の申告をしました。
これを受けて会社は事情聴取などの調査を行ったところ、セクハラ行為があったとまで認定できないものの、不適切な行為はあったとして、Aに厳重注意をしました。その上で、Xに対しては、調査結果やAへの処分、そして再発防止のために社内研修を実施することなどを説明しました。
しかし、これを不服に思ったXは、会社の対応は不十分であるとして、会社の職場環境配慮義務違反を理由に損害賠償を求めました。
【裁判所の判断】
これに対して裁判所は、Aの行為はセクハラかつ違法な行為であると認定しつつ、会社による対応そのものは適切なものであり、会社に職場環境配慮義務違反はないとして、Xの請求を退けました。
【ポイント】
本件のポイントは、Aの行為に対する判断が会社と裁判所とで異なっていたものの、会社として十分な調査を行い、再発防止策を講じるなどの適切な対応をとっていたことを理由に、会社の責任を否定した点にあります。
職場におけるハラスメント問題においては、目撃証言などの客観的証拠が必ずあるとも限らず、またハラスメントに該当するかどうかの判断も諸事情を総合考慮して行われるため、会社と裁判所で判断が分かれることは十分にあり得ます。そのため、会社の責任の有無については、判断が正しかったかどうかよりも、前提となる調査をしっかりと行ったか、そして調査結果を踏まえた適切な対応を講じたかといった点が重視されているとみることができます。
従業員からハラスメント被害の申告があった場合、会社としては責任を負う心配から、ハラスメント該当性を否定することをおそれてしまうかもしれません。しかし、上記のとおり重要なのは適切な調査及び対応ですから、ハラスメントに該当しないという判断に至ったのであれば、その判断を前提に対応することを過度に心配する必要はないでしょう。
Atty’s chat
今年のGWは、関西地方でお寺巡りをしてきました。行く先々のお寺でお土産を購入したのですが、個人的なヒットは安倍文殊院で購入したクラフトジン(その名も「晴明」)、そして六波羅蜜寺で購入した「空也上人立像アクリルスタンド」です。特にアクリルスタンドは存在感抜群で、かなりのお気に入りになりました。最近は各寺院ごとにユニークなお土産を用意しているので、お土産選びがとても楽しいですね。 (2026年5月28日 文責:越田 洋介)
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