労働事件裁判例のご紹介⑨

実際の労働事件の裁判例を紹介するシリーズの第9回目です。

 

  近時における、会社の主張が認められた裁判例を紹介しますので、皆様の労務管理の参考としていただけますと幸いです。今回は、子会社へ出向していた労働者に対する、出向元の会社への復職命令について、労働者の同意は必要なくこれが有効と判断された事案です(東京高判令和2.2.20)

 

【裁判の概要】
 会社Yは、労働者Xを子会社へ出向をさせていたところ、適正な労務管理等を理由にXをYに復職させることとし、復職命令を発出しました。
 ところが、労働者Xは、復職には労働者自身の同意が必要であるところ、自分はこれに同意していないため復職命令は無効であるとして、当該復職命令が無効であることを前提に、復職後の業務に従事する義務がないことの確認を求めて提訴しました。

 

【裁判所の判断】
これに対して裁判所は、Yによる復職命令は有効であるとして、Xの請求を退けました。

 

【ポイント】
  本件のポイントは、出向した労働者を復職させるにあたり、会社が労働者の同意なく復職を命じることができるか、という点にあります。

 

 この点については裁判所は、原則として同意は不要であるが、特段の事情がある場合には同意を要する、と考えています。具体的には、出向に際し、今後は出向元へ復帰させないことが予定されており、将来的に再び出向元で労務を提供することはない旨の合意が成立したなどの特段の事情がある場合には同意が求められる、という考え方です。

本件ではそのような合意はなかったとして、同意なく復職命令が認められると判断しています。

 

  ところで、上記のような合意の有無が書面などから明瞭であれば問題ありませんが、そうでない場合には、当時のやり取りなどから両者間でどのような合意が成立していたとみるのが妥当か、という形で判断されることになります。

 

  そのため、将来的な復職があり得る場合には、出向に際して、復職させない旨の合意をしないことはもちろん、「おそらく出向元に戻ることはないだろう」といった復職がないことを期待させるような言動も控えるように注意する必要があるでしょう。

 

Atty’s  chat

先日、長野県へ行き自転車で諏訪大社四社巡りをしてきました。各お宮はどれもこじんまりとした規模であるものの、自然崇拝の形を残す落ち着いた佇まいや、拝殿に施された素晴らしい彫刻など、見所がありました。
諏訪湖も半周ほどしてきましたが、爽やかな景色に加え、全周にわたってサイクリングロードが整備されているため、とても気持ちよく走ることができました。
いつかは冬に訪れて、諏訪湖の御神渡りをみてみたいと思っています。                    (2026年7月24日  文責:越田  洋介)