【労働裁判例を知り、会社を守る!】第17回 固定残業手当制にしていたはずが無効に・・・?
今回は、固定残業手当制にしていたはずが、無効と判断されてしまった裁判例(最高裁判所平成24年3月8日)をご紹介いたします。
このケースは、ある人材派遣会社が、元従業員から、「固定残業代制では足りていなかった分の残業代」を支払うよう請求された裁判例です(本稿のために事案等は簡略化してあります)。
裁判所は、この会社が採用していた固定残業代制は無効であり、固定残業代制のもと支払われていた賃金だけでは足りず、別途足りない分の残業代を支払わなければならないと判断しました。
会社としては「固定残業代制にしていてかつその制限時間内なのだから未払の残業代は無い」と考えていたのに、そうではない判断がなされてしまったのですね。
なぜ、固定残業代制が無効と判断されてしまったのでしょうか…?
この裁判例の一番大きなポイントとして、固定残業代制が有効と言えるためには、賃金について、通常の労働時間部分と時間外割増部分の時間が明確に区別されている必要があるという点が挙げられます。
会社としては、「固定残業代制を採用しているのだから、その範囲内におさまっていそうであれば細かい計算は不要」と思ってしまいがちのところですが、それは危険ということですね。
さらに言うと、固定残業代制の対償時間を超えた部分については、その超えた部分の時間については、固定残業代制の枠外のものとして、別途割増賃金を支払う必要があるのですね。
結局のところ、固定残業代制を採用していたとしても、通常の給与計算と同じように全ての項目を計算しておく必要があるということですね。
弁護士の徒然草
この裁判例以外にも、近年、固定残業代制が無効と判断される裁判例が相次いでおり、裁判所の見方もかなり厳しくなってきています。
固定残業代制には、例えば給与額の見栄えが良くなったり、毎月の給与額の波が少なくなったり、無駄な残業を防ぎやすいなどのメリットもあります。
その一方で、無効と判断された場合のリスクはかなり大きいです。
固定残業代制を採用する場合は、給与計算担当者と共に、制度設計自体や日々の計算方法を慎重に検討する必要がありそうです。 (2026年4月1日 文責:佐山 洸二郎)


