【事業承継編】本当に会社は300万円で買えるのか?
昔、ベストセラーになった「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本があります。今回は年末ですので、そもそも、300万円で会社を買うことができるのかという話をさせてもらえればと思います。
結論から言えば、「会社の対価」という限定をつければ、300万円以下で会社を買うことができます。
会社の価値は、持っている資産の額から借金等を差し引いた金額とか、将来の収益力等で評価しますから、固定資産等がほとんどなかったり、借金が多かったり、赤字だったりすれば、会社の価値は下がります。実務でも「1円譲渡」と呼ばれるような、ほぼ無償での取引というのもよく見ます。
しかし、安い会社には必ず裏側のコストとリスクが存在し、そこまでうまい話ばかりではないのが現実です。まず、買収対象の会社が金融機関から融資を受けている場合、買収者はその債務に対する連帯保証を求められることが非常に多いです。また、会社を維持し、事業を継続していくためには、買収価格とは別に、事務所の家賃、従業員の給与、仕入れのための費用といった、多額の運転資金が必要になります。
さらに、不動産収入のように何もしなくてもお金が入ってくるわけではなく、サラリーマンから転身した自身が事業主として、自らもプレイヤーとして積極的に働いていかなければなりません。創業者と同様の事業運営、財務管理、そしてリスクに対する覚悟と準備が求められます。
そして、そもそも買収対象の会社をどのように探すのかという問題も立ちはだかります。主な方法としては二通りが考えられます。一つは、各地の事業承継・引継ぎ支援センターに相談し、後継者人材バンクに登録してマッチングを図る方法です。この方法は、事前に各地の商工会議所等で創業に向けた注意点を聞いたうえで、データベースに掲載してもらうというステップを踏むことになります。もう一つは、バトンズなどのM&Aプラットフォームと呼ばれるサービスに登録し、データベースを閲覧しながら、候補企業を自力で探し、買収を進めていく方法です。これらのプロセスを見ても分かる通り、低価格での会社買収を実現するには、資金の準備だけでなく、情報収集や交渉といった面で、案外大変な努力が必要なのです。
最近のへべれけ日記
年末です。熱燗の季節ですね。今回は、鳥取の辨天娘と広島の竹鶴というところがコラボしたCROSS CLIMATEという日本酒(今年発売ですが、2022年醸造)を紹介します。それぞれの酒米等を交換して作ったコラボ商品なのですが、それぞれの酒蔵のクセが出ていて、なかなか面白いです。50度くらいの熱燗にして、お鍋と一緒にどうぞ。
(2025年12月16日 文責:杉浦 智彦)
- 【事業承継編】本当に会社は300万円で買えるのか?
- 退職に関するトラブルについて(18)
- 知って得する労働法改正④
- 労働事件裁判例のご紹介④
- 英文契約書のアレコレ(3)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第14回 無許可残業であっても給与が発生する・・・?・・・?
- 【事業承継編】赤字や債務超過の会社でも売れるのか?
- 退職に関するトラブルについて(17)
- 労働事件裁判例のご紹介③
- 英文契約書のアレコレ(2)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第13回 放送事故を起こした社員を解雇したら無効に・・・?
- 【事業承継編】悪質な買い手にご注意!その見極め方と対策
- 知って得する労働法改正③
- 労働事件裁判例のご紹介➁
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第12回 「管理監督者」だから割増賃金を支給していなかった・・・?
- 【事業承継編】高額な価格を提示してくれる会社がよいのか
- 退職に関するトラブルについて(16)
- 知って得する労働法改正➁
- 労働事件裁判例のご紹介
- 英文契約書のアレコレ(1)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第11回 就業規則を周知していなかったため無効に・・・?
- 【事業承継編】買い手はどこまでの価格を提示できるのか?
- 退職に関するトラブルについて(15)
- 知って得する労働法改正①
- 請負契約をめぐる注意点➁
- 外国人雇用の法務(20)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第10回 精神疾患の疑いのある従業員への対応は・・・?
- 【事業承継編】誰にとっての「企業価値」?
- 退職に関するトラブルについて(14)
- 請負契約をめぐる注意点


