労働事件裁判例のご紹介⑤
実際の労働事件の裁判例を紹介するシリーズの第4回目です。近時における、会社の主張が認められた裁判例を紹介しますので、皆様の労務管理の参考としていただけますと幸いです。
今回は、いわゆる無期転換ルール(有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルール。労働契約法18条)によって無期転換した従業員の労働条件について、原則として正社員と同様にする必要はないとされた事件です(大阪地判令和2.11.25)。
【裁判の概要】
会社は、有期雇用契約の従業員と正社員との間で、賞与・昇給・退職金などの待遇において違いを設けていました。この状況において、有期雇用契約から無期転換した従業員Xが、無期転換後には正社員と同様の待遇を受ける権利があるとして、会社に対して待遇の違いによって生じた差額を請求してきました。
【裁判所の判断】
これに対して裁判所は、有期雇用契約から無期転換したからといって、必ず正社員と同様の待遇(労働条件)となるわけではないとして、Xの請求を退けました。
【ポイント】
大前提として、無期雇用=正社員ではありません。無期雇用はあくまでも雇用期間に定めがないだけです。そして、労契法18条は、無期転換した場合の労働条件について、もともとの有期労働契約のものと同一とすることを原則としています。その上で、「別段の定め」がある場合にはこの限りではないとして、例外があることも定めています。
Xは、正社員用の就業規則が定められていることをもって、「別段の定め」があるとして、無期転換した自身も正社員と同様の待遇となると主張しました。しかし、裁判所は、正社員用の就業規則があるだけでは別段の定めとはいえないとしてXの請求を退け、無期転換したからといって正社員と同じ待遇となるわけではなく、有期雇用契約と同じ労働条件とすることに問題はないと判断しています。
以上から、実務上においては、例えば「無期転換した際には正社員と同様の労働条件とする」といった「別段の定め」がない限り、無期転換したとしても、従前の労働条件を引き継ぐことで問題ないでしょう。
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皆様、本年もよろしくお願いいたします。
新年ということで、今年一年の抱負を立てられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私の抱負は、「たくさん旅行をする」です(抱負というより、遊びの目標ですね)。行きたい場所は沢山ありますが、四国は一度も訪れたことがないので、是非行ってみたいと思っています。皆様のおすすめの旅行先などあれば、教えていただけると嬉しいです。 (2026年1月14日 文責:越田 洋介)
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