【事業承継編】買い手はどこまでの価格を提示できるのか?

前回の「企業価値」の話の続きです。前回は、「誰にとっての企業価値か」という話が重要であり、第三者へ承継させるときには、買い手が「このビジネスを引き継いだら、どれだけ利益が得られるか」という将来の収益性を踏まえて企業価値を判断していくという話をしました。
 実際のM&A市場では、この企業価値よりも高めの金額がつくことがあります。その主な理由が、「シナジー効果」と「競争原理」です。

 

まず、「シナジー効果」とは、買い手が既存の事業と買収する事業を組み合わせることで、単独で運営するよりも大きな価値を生み出すことです。例えば、間接部門の重複を解消することによるコスト削減や、技術統合による新製品開発などが挙げられます。これらは、買収後に買い手が努力することで実現する利益であり、本来的には買い手に帰属するものです。
しかしながら、M&Aでは、同じ会社を買収しようとする競合相手がいる場合があります。買い手側は、自社が買収できるように様々な条件を提案し、自社との統合を促しますが、その中で、一定程度実現しそうなシナジーの一部を売り手側に還元し、好条件を提示することが多く見られます。

 

このように、「企業価値」と一口に言っても様々な意味がありますし、実際には、(本来は売り手に属さない)シナジーの一部まで加味される事例もあることから、専門家であればあるほどコメントしにくいのが実情です(苦笑)。なお一般的には、①競合相手がいない場合は、時価評価した純資産に利益1~3年分の上乗せ、②競合相手がいる場合は、シナジーの一部を加える前提で、純資産に利益を3~5年分を足すことが多いとされています。

 

ただ、高い額を提示してくれる買い手がいいかというと、必ずしもそうではありません。その点は、次回、詳しく解説します。

 

最近のへべれけ日記

今回は、高知のお酒である「文佳人 夏純吟」を紹介します(四合瓶で1,760円くらいです)。ラムネ感のある甘酸っぱい感じのお酒ではあるのですが、ベタベタせず、さっぱりといただける日本酒です。日本酒初心者の方にもオススメできる酒かと。しっかり冷蔵庫で冷やして、グラスに氷を浮かべて飲むのがオススメです。料理と合わせる際は、あっさり目のものが合う気がしますが、個人的には、ナスの煮浸しとかが良いように思っております。ぜひお試しください!

                                                                                                                    (2025年6月30日 文責:杉浦 智彦)