知って得する労働法改正⑦

パワハラ指針が示す「業務上の適正な指導」の境界線
さて、今回は厚生労働省の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「パワハラ指針」といいます)を参考に、企業における「正当な業務指導」の範囲について解説します。

 

近年、「これを言ったらパワハラになるのでは」と現場の管理職が萎縮し、必要な指導を控えてしまうという声を多く耳にします。しかし、パワハラ指針では、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」と明記されています。

 

特に、「パワハラに該当しないと考えられる例」として示されている以下の点です。
・遅刻や欠勤など、社会的ルールに反する言動を繰り返す労働者に対して強く注意すること。
・その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

 

これらの指導は、企業の適正な運営のために不可欠なものであり、法はこれらを禁止していません。

ただし、指導の際には「目的」と「態様」が業務上必要かつ相当な範囲内と言えるかが重要です。人格を否定するような言動や、業務上明らかに不要な強制は、不当な圧迫と認定されるリスクがあります。

 

万が一、従業員から不当な主張を受けた場合でも、指導内容等を記録に残しておくことは重要です。

 

また、就業規則上の戒告や注意処分などの正規の懲戒手続によって対応することも対策となります。
管理職の皆様には、指針を正しく理解し、活用していただければと存じます。

 

後書き

「ハラスメント」の語源は、古フランス語で猟犬に追い詰められて疲弊した獲物の様子を表した「harer」から来ているそうです。このような由来から考えるとハラスメントはひどく大仰な言葉で、昨今の何にでも「~ハラスメント」とする風潮にはそぐわないような気がいたします。                                                             (2026年4月24日  文責:高橋  涼馬)