労働事件裁判例のご紹介⑩

実際の労働事件の裁判例を紹介するシリーズの第10回目です。

 

近時における、会社の主張が認められた裁判例を紹介しますので、皆様の労務管理の参考としていただけますと幸いです。今回は、専門職を配置転換した会社の配転命令権行使について、これが有効とされた事案です(東京高判令和5.8.31)

【裁判の概要】
会社Yが、専門職(理学療法士)である労働者Xを、能力や勤務態度が芳しくないことを考慮してリハビリ部門から事務部門へと配転したところ、Xがこの配転命令は無効だとして提訴しました。なお、Xについて、職務ないし勤務地限定の特約はありませんでした。

【裁判所の判断】
これに対して裁判所は、Yによる配転命令は有効であるとして、Xの請求を退けました。

【ポイント】
会社が配転命令権を有している場合、会社は権限に基づき労働者を配転することができますが、無制限に認められるわけではありません。
具体的には、①配転に業務上の必要性があり、②不当な動機や目的によるものでなく、③配転によって著しい不利益が生じない、という条件を全て満たす必要があります。
例えば、能力が低い労働者をいやがらせ目的で配転する場合(②)や、配転によって勤務地が大変な遠方になったり給与が大きく下がる場合など(③)は、無効となるおそれがあります。
本件では、本人の能力や勤務態度が芳しくないという事由がありましたが、あくまでもそのような労働者が恙無く業務を遂行できるようにという考えからの配転でした。そのため、①②が認められました。また、給与などの待遇面でも大きな変化がなかったため、③についても認められています。

 

このように、能力や勤務態度が理由の配転であっても、いわば適材適所の考えによるものであれば、有効と判断されることはあります。

ところで、本件の1審は、①~③の条件に照らした上で本件配転命令を無効と判断しています。このように、配転命令の有効性は、裁判所であっても判断が分かれることがある難しい問題です。実際に行うにあたっては、①~③の条件を念頭に、慎重に進めていく必要があるでしょう。

 

Atty’s  chat

先日、念願かなって四国としまなみ海道を自転車で走ってきました。高知龍馬空港からスタートして、松山→今治→しまなみ海道→尾張の250kmほどを3日間で走るコースです。四国の山間の道、しまなみ海道の海上の道、そのどちらも素晴らしく、気持ちの良いツーリングとなりました。いつかは自転車で四国一周にも挑戦してみたいと思っています。

                                                                                                                  (2026年9月2日  文責:越田  洋介)