【事業承継編】非上場株の評価ルールが刷新へ。国税庁の検討会議が始動(4)

これまで追ってきた、非上場株の(売買価格ではなく)相続税の計算に関する「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」ですが、ついに第5回会議で、国税庁から新たな株価の算定方法の提案が行われました。それが「残余利益方式」と呼ばれるものになります。この方式について、諸方面から異論が出ているところではあるのですが、今回はこの方式について解説したいと思っています。

この方式の基礎にあるのは、中小企業のM&A等でも利用される「年買法」と共通する考え方です。年買法は、おおむね「純資産+利益×年数」という計算により、①企業が保有する資産の価値と、②企業の収益獲得能力とを合算して企業価値を求める方法です。残余利益方式も、その発想と近い内容になっています。

①企業の保有資産については、資産の売却ではなく事業の継続を前提とするため、時価ではなく決算書どおりの「簿価」による純資産を用います。時価への変更が不要となることから、評価が簡素になり、事務負担の軽減も期待できます。また、評価上の恣意性を抑え、同一の基準で評価するため、法人税法上の帳簿価額等を用いることが検討されています。
②企業の収益獲得能力は、「超過収益(残余利益)」によって評価します。超過収益とは、企業の利益のうち、(同業種で)通常期待される利益相当額を上回る部分です。この超過収益を、マイナスの場合も含めて簿価純資産に加減します。このため、期待収益率を上回る収益力を持つ会社では、株式評価額が簿価純資産を上回ります。一方、赤字又は低収益の会社では超過収益がマイナスとなり、その分が簿価純資産から減額されるため、評価額は簿価純資産を下回ることになります。

 

一見すると従来よりシンプルな方式に思えますが、異論が示されているとおり、いくつかの課題も考えられます。

次回は、残余利益方式のデメリットや実務上の論点を解説します。

 

独立のご挨拶

当事務所代表の大山からのメールで既にご存じの方も多いかと思いますが、来年1月、横浜市内で独立することとなりました。この事務所の居心地が良く、長く在籍してまいりましたが、石崎先生をはじめ、独立した諸先輩方から「そろそろ出ていかんかい!(意訳)」との檄をいただいたこともあり、40歳を目前に独立を決意いたしました。これまで当事務所で教わったことを活かし、今後も価値あるリーガルサービスを提供してまいります。         (2026年9月25日  文責:杉浦 智彦)