【労働裁判例を知り、会社を守る!】第13回 放送事故を起こした社員を解雇したら無効に・・・?
今回は、勤怠不良の社員を解雇したが、無効と判断されてしまった裁判例(最高裁昭和52年1月31日判決)をご紹介します。
この会社は、ラジオニュース放送等を営む会社でした。
ある従業員が、以下のような2つの放送事故を起こしてしまいました。
まず一つ目が、宿直勤務中に寝過ごして、午前6時から10分間放送されるべきラジオニュースを放送出来ませんでした。
さらにその翌月、再度宿直勤務中に寝過ごしてラジオニュースを放送出来ず、さらに事実と異なる報告書を上司に提出しました。
会社は、上記2つの放送事故を理由として、この従業員を普通解雇にしました。
そして従業員が会社を相手取り、「解雇は無効だ」と主張する裁判を起こしました。
事件は最高裁判所までいき、最終的に「解雇は無効」と判断されました。
2度も放送事故を起こしたのに、なぜ解雇は無効とされたのでしょうか?
裁判所の判断のポイントは3つで、①他の社員も過去に放送事故を起こしていたがその者は解雇されておらず不公平であること、②会社が放送事故再発防止策をとっていなかったこと、③この従業員が過去に処分歴もなく勤務成績も悪くなかったことです。では、会社としてはどうすれば良かったのでしょうか…?
まず①の点について、特定の従業員だけを狙い撃ちにするのではなく、従業員間で、同じようなミスをしたら同じような処分を下さなければならなかったのですね。
②の点について、1度放送事故が起こったのですから「宿直員の増員」「定刻起床の確認」など、具体的な再発防止策をとる必要がありました。
③については、やはり「いきなり解雇という最終手段」ではなく「戒告」「減給」等の軽い処分から積み重ねる必要があったのですね。少なくとも1度目の放送事故の際に何らかの処分をしておく必要があったと言えます。
短期間に2回の放送事故という大きなミスであっても、いきなりの解雇は無効と判断されてしまう…日本の労働法と裁判所が解雇を非常に厳しく判断している一例としてご紹介させていただきました。
弁護士の徒然草
先日出張で島根県に行ったのですが、その足で出雲大社にも行ってきました。
伊勢神宮のような賑やかな感じとはまた少し異なり、「巨大で荘厳な佇まい」という様子で、神社神道にそこまで詳しくない私でも圧倒されました。
帰りには宍道湖にも寄り、美味しいシジミ汁を飲んで帰路につきました。 (2025年10月1日 文責:佐山 洸二郎)
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