【労働裁判例を知り、会社を守る!】第8回 能力不足というだけでは解雇は出来ない・・・?

今回は、「従業員が能力不足というだけでは、解雇は出来ない」との判断がなされた裁判例(東京地方裁判所平成11年10月15日判決)をご紹介いたします。

 

この裁判例の会社は、家庭用ゲーム機の製造販売等を営んでいました。
この会社で、ある従業員が、能力不足を理由に解雇されました。

従業員は、「解雇は無効だ」「会社が解雇を主張している日以降の給料を支払え」と訴えて、会社に対して裁判を起こしました。
裁判所は、この従業員が能力不足であったこと自体は認めています。
具体的には、「取引先からの苦情が相次いでいた」「海外からの発注管理が出来るほどの英語力が無かった」「人事考課では下位10%であった」「アルバイト社員の雇用管理が適切に出来なかった」などです。
そして会社としても、出来る限りの配置転換は繰り返してきました。
それにもかかわらず、裁判所は、「解雇は無効」「会社が解雇を主張している日以降の給料も支払う必要がある」と判断しました。会社が敗訴した理由は何なのでしょうか?この裁判例では様々な理由が述べられていますが、最大のポイントは「会社が、能力向上のための具体的な指導・教育を行っていなかった」こととされています。
つまり、解雇が認められるためには、最低でも「能力不足であり、かつ改善の余地も無いこと」までが必要とされたのですね。
この裁判例では、能力不足はある程度認められていた一方で、会社がこの従業員を指導・教育したということが認められなかったのですね。
ここからは、労働法と裁判所の「一度雇用したのであれば、その従業員を責任持って教育・指導しなければならない」という考え方が読み取れます。

 

会社としては、能力不足の従業員がいたとしても、すぐに解雇にするのではなく、指導・教育(例えば語学力、パソコン操作能力、ミスとその改善策の指摘など)」を可能な限り具体的に行う必要があるということですね。

 

弁護士の徒然草

大阪出張にて、人生で初めて生の「吉本新喜劇」を見てきました。新喜劇にもコンプライアンスの波は押し寄せていて、「無闇にひっぱたく」とか「ブッサイクやな」などのやりとりは、だいぶ減ってきたように思います。もちろん良いことなのですが少し寂しさもあり、複雑な気持ちです!                                               (2025年3月17日  文責:佐山  洸二郎)