【事業承継編】誰にとっての「企業価値」?

第三者に承継する場合でも、従業員やご親族に承継する場合でも、「企業価値」というテーマは避けて通れません。

 実際、私も「当社の企業価値ってどのくらいですか?」と尋ねられることがありますが、これに明確に答えるのは非常に難しいのです。

理論上は、あらゆる情報を踏まえて企業価値を導く、いわば「神様から見た企業価値」を想定することも可能です。ただし、実務ではすべての情報を把握するのは現実的に不可能ですし、将来の利益予測も、経営者交代や経済環境に左右されます。
だからこそ、「誰にとっての企業価値か」という視点が重要になります。

 

まず一つ目は、「税務署にとっての企業価値」です。これは相続税や贈与税の課税時に用いられる評価で、「財産評価基本通達」に基づき、定型的かつ簡便に算出されます。

この価額は、「この金額以上なら税務上の問題が生じにくい」という、いわば“最低ライン”としての意味を持ち、親族や従業員への承継時に重要な参考値となります。

 

二つ目は、「取引相手にとっての企業価値」、つまり第三者へ承継する場合の評価です。買い手は、「このビジネスを引き継いだら、どれだけ利益が得られるか」という将来の収益性を重視します。また、「仮に失敗した場合でも、どの程度の資産が残るか」といった、リスクへの備えも考慮されます。いわば“保険的価値”です。
実務では、時価評価した純資産に数年分の利益を加える手法がよく用いられますが、「何年分を加算するか」は状況次第で、他の買い手のオファー動向によっても変わります。

 

 

このように、企業価値とは一つの絶対的な数字ではなく、評価主体によって大きく異なります。事業承継を考えるうえでは、「誰にとっての企業価値か」という視点が、冷静な判断に欠かせません。

 

最近のへべれけ日記

この号からは、お酒にまつわる日記を綴っていこうと思います。というのも、私は日本酒がとても好きなんです。何が好きかといえば、「それほど高くない」という点に魅力を感じています。高級な日本酒でも、四合瓶で1万円を超えることはほとんどありませんし、実際のところ、3,000円を超えると、価格による味の違いはあまり感じられなくなります。つまり、日本酒はコストパフォーマンスが非常に高いお酒なのです。そんなわけで、「次回から銘柄を紹介するため」という言い訳を携えて、今日から(いや、今日も?)お酒を楽しむつもりです。                            (2025年5月19日 文責:杉浦 智彦)