管理監督者をめぐる問題⑤

前回から引き続き、会社における管理監督者(いわゆる管理職)をめぐる問題について解説していきます。

 

前回は、管理監督者性が認められるための3つの条件の内、①重要な職責について、どのような場合に肯定されるかをみてみました。実際の裁判例をみることで、少しずつイメージが掴めてきましたでしょうか。

今回は、条件②労務管理の裁量についてみてみます。

②労務管理の裁量があるということは、端的には、自身の労働時間(出退勤時間など)を自身で決めることができるということです。つまり、会社から、「何時から何時までは仕事してくださいね」といった指示を受けていない状態といえます。
このような考え方をもとに、裁判所は労務管理の裁量の有無を判断します。

労務管理の裁量について判断した裁判例としては、次のようなものがあります。
・銀行の支店長の地位にあったが、厳しい出退勤管理を受けていたとして裁量を否定した事例
・飲食店の店長の地位にあり、労働時間を自ら決められることになっていたが、店長としての職務遂行に相当の時間を要し、実質的には常に一定の長時間労働を余儀なくされていたとして否定した事例
これらの裁判例からは、形式的だけでなく、実質的にも労働時間を管理できていたと認められる必要があることが読み取れます。

ところで、「管理職にもタイムカードの打刻をしてもらっているが、そうすると出退勤を管理しているとして管理職として認められなくなってしまうのか」という質問を頂くことがあります。
これについては、特に問題ありません。
タイムカードなどで出退勤を記録しても、それはあくまでも出退勤の「記録」ないしは「把握」であって、「管理」ではありません。

むしろ、近年は労働法によって、使用者としては労働者の労働時間の把握に努めることが求められています。そのため、タイムカード等で出退勤時間を記録していたとしても、それだけで管理監督者性が否定されることはないでしょう。

 

Atty’s  chat

先日、エスプレッソマシンを購入しました。マシンといっても安価で簡易的なものなのですが、イタリアの一般家庭で広く愛されているものらしく、低圧ながら美味しいエスプレッソを入れることができました。おうち時間が少しリッチになった気がします。今はカフェオレとして飲んでいるだけですが、追々はカプチーノやアフォガードなども楽しみたいところです。                                                                                                            (2024年12月12日  文責:越田 洋介)