【労働裁判例を知り、会社を守る!】第6回 社内のパワハラを放置すると会社にも責任が生ずる?

今回は「社内のパワハラについて、加害者のみならず会社にも損害賠償責任が生じる」と判断された裁判例(東京地裁平成22年7月27日)をご紹介いたします。

 

 この裁判例の会社は、消費者金融業を営んでいました。
 その会社で、上司が、部下らに、下記のような行為をしていました。
⑴ 他の従業員が多数いる前で「馬鹿野郎」「会社を辞めろ」「給料泥棒」などと発言
⑵ 配偶者に言及し「よくこんな奴と結婚したな。もの好きもいるもんだな」と発言
⑶ 「今後どのような処分でも受け入れる」という始末書を提出させる

 

 裁判所は、このような行為について、パワハラに該当し、合計110万円の損害賠償責任が生ずると判断しています。
 ※その一方で、「書面でなく電話での催促を中心とする債権回収方法を指示する」「寿司が食えない奴は水でも飲んでろと発言する」などの行為はパワハラではないと判断されています。上記の一連のパワハラについて、裁判所は、加害者のみならず会社にも同様の責任が生ずると判断しています。その理由として、会社が「事前のパワハラ予防を行っていなかったこと」「パワハラ発覚後にも何も対応をとらなかったこと」などが挙げられています。会社がパワハラ対策を行わなかったばかりに、金銭的賠償責任のみならず、社名が世の中に知れ渡ってしまうという大きな損害が生じてしまったのですね。

 では、会社としてはどのようなパワハラ対策をしていれば良かったのでしょうか?

 

 まず事前の対策としては「社員研修の実施」「相談窓口設置」「社内への貼り紙」などが挙げられます。
 また事後の対策としては「関係者から事情聴取」「必要な処分(配置転換、加害者への処分)を行う」などが挙げられます。

 会社が責任を負わないためという目先の利益を超えて、パワハラが発生しないような快適な職場環境を整える意味でも、上記のような対策が重要になってきます。

 

弁護士の徒然草

皆様、今年も何卒、よろしくお願いいたします。
実はこの1年間で、私の祖父母と妻の祖母が亡くなり、三重の意味で喪中なので、おめでとうございますとは言えない状況でございます。
とはいえ、3人とも皆、紛れもなく大往生でした。寂しがってばかりいても仕方がないですので、祖父母の意志を継いで、今年も新たな気持ちで頑張りたいと思います!                                                   (2025年1月7日  文責:佐山  洸二郎)