【労働裁判例を知り、会社を守る!】第9回 「退職勧奨」自体が違法行為に・・・?

今回は、「退職勧奨をしたこと自体が違法行為にあたる」との判断がなされた裁判例(最高裁昭和55年7月10日判決)をご紹介いたします。

この裁判例は私立高等学校が舞台でしたが、裁判所の判断は民間企業にもほぼ同じくあてはまります。教育委員会(会社)が、この高等学校の教師(従業員)に対して、繰り返し退職勧奨を行い、教師側が市(会社)に対して慰謝料を求めました。
退職勧奨とは、会社側が、従業員の自主退職または合意退職を提案することです。
その提案に従うかどうかは従業員の自由ですので、会社の一方的な行為である解雇とは法的に大きく異なります。
このケースでは、「合計13回にわたり、最長2時間に渡って面談が行われた」「『あなたがやめれば欠員の補充もできるし学校設備の充実もできる』などという発言がなされた」「教師側は退職勧奨に従わないという意思を明確に表明していた」などという事実関係でした。

 

裁判所は「退職勧奨は違法」と判断し、市に対して慰謝料の支払いを命じました。
違法と判断された大きな理由としては、退職勧奨に従わないことを表明していたにもかかわらず、多数回かつ長時間にわたり面談が行われたこととされています。
こういった結末を防ぐために、会社としてはどうすれば良いのでしょうか?
まず多数回かつ長時間にわたる面談を避けるべきなのは当然のことですね。まして従業員側が退職に応じない意志を表明しているのであれば、執拗に退職勧奨をするのは望ましくありません。
その場合、例えば、従業員側にもメリットを容易するなどの工夫が必要です。

 

代表的なものとしては、転職先を一緒に探す、退職理由を「会社都合」にする、退職金を用意する、などの方法です。
退職勧奨は解雇と異なりあくまで話し合いですので、これらの点についての従業員側の要望も十分に考慮する必要がるのですね。

 

弁護士の徒然草

ようやく春らしい気候になってきました。この時期はよく外を散歩するのですが、横浜周辺では、外国人観光客や修学旅行生で賑わっています。その一方で新たなホテルも次々と建っており、果たして需要供給のバランスはとれているのか…?と、ふと疑問に思ってしまう瞬間もあります。                                                  (2025年4月21日  文責:佐山 洸二郎)