統計でみる労働審判
前回は、司法統計という裁判所が公表している裁判に関する様々な数字から、裁判の実情について簡単にみてみました。今回は、労働審判について、いくつかの数字を引用しながら見てみたいと思います。
そもそも労働審判とは、労使間の労働問題について解決するための、裁判とは別の司法制度です。裁判を簡略化したものといってもよいでしょう。
最大の特徴として、①解決までの期間の短さ、②解決策の柔軟さが挙げられます。
労働審判は、3回以内の期日で終わらせることを旨としており、事実、事件解決までの平均日数は約80日となっています。裁判となると半年から1年はかかるところ、労働審判では3か月以内に終わっているということです。
また、全体の約7割の事件が労働審判内の話合いで解決しています。これは労働審判が裁判と違い、白黒つけるのではなく両者が納得できる落としどころを探ることを旨としているためです。裁判官も、話合いによる解決を念頭に期日を進めてくれます(なお、話合いではなく「審判」による決着は約15%です)。
このことから、労働審判とは、迅速に話合いで問題解決するための手段といえるでしょう。
このようなメリットから、労働審判を活用する流れが広がってきているようです。制度が発足した平成18年当時は1000件以下だった年間事件数が、平成21年以降は毎年3000件以上となり、令和3年時点では約3600件となっています。
労働問題が生じないことが一番であることは間違いありませんが、仮に生じてしまった場合であっても、労働審判によって迅速かつ柔軟な解決が図れるのであれば、会社にとっても大きな負担減となるでしょう。
Atty’s chat
気がつけば今年もあと2週間ほどです。年を重ねるごとに、一年が過ぎ去るのが速くなるように感じます。皆さんにとって、この1年はいかがでしたでしょうか。
私は来年に向けて、「来年こそは色々なことに挑戦し、躍進の年にするぞ」なんて決意をしましたが、ここ10年ほど毎年同じ決意をしている気がします。 (2022年12月13日 文責:越田洋介)
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