会社に役立つ刑事豆知識(3)

前回は、社内で、会社の所有物が盗まれた際に、会社としてどう対処していくのが良いかについて考えてみました。

会社がその被害事件を警察沙汰にまでしたいか否かで、大きく二つの方向性が分かれるということを申し上げました。

 

今回は、会社の中で、従業員の持ち物が盗まれてしまった場合について、ご解説できればと思います。

まず、会社対応として、被害届を出さなければならないでしょうか?

 

例えば、会社が従業員から預かった物を盗まれてしまった場合、会社も被害者と言えそうですし、事件を告発する分には、会社でも簡単にすることが出来ます。

しかし、捜査の実務では、基本的には所有者本人に、被害届を出すか出さないか確認し、記載を求めます。究極的な被害者は、所有者本人だからです。ですので、会社としては、基本的に被害届を出す義務まで負いません。

被害届を出す/出さないというのも、最終的には被害者の意思次第になりますので、会社としては、被害者と被害状況を確認し、犯人をどうしたいか、返還を受けるために手伝えることは無いかと、被害者と協議するスタンスが大切です。

 

警察が捜査を進める過程で、防犯カメラの映像などの提供を求められる可能性もあるでしょうから、そういった捜査協力は、別途していくことになります。会社としては、加害者が誰なのか、事件の顛末が気になるところではあります。その場合は、被害者本人からこっそり聞くと、名誉棄損の問題に被害者を巻き込みかねませんし、警察に情報を求めていくことが好ましいでしょう(次回に続きます)。

 

物好き弁護士のつぶやき

窃盗自体は、決して良いものとは言えませんが、それとは別に、文物の中には昔から盗みや盗賊が活躍し、人々の関心を惹きつけて止まないのはどうしてなのか、と思うことがあります。
江戸時代の盗賊といえば、鼠小僧かと思います。武家屋敷を狙って盗みを働いたらしく、「お金持ちのところで盗み、貧しい人たちにお金を与えていた」と噂されて、当時から伝説化された人物だったようです。こういった「義賊」として盗賊が好かれるという気持ちは分からなくないのですが、自分にはよくわからないことが鼠小僧にはありまして、それは鼠小僧の墓であります。

鼠小僧の墓は、両国の回向院というところにあるそうなのですが、長年捕まらなかったご利益にあやかって、墓石を削って持って帰る人がいるというのです。それって普通に器物損壊罪なんじゃ、、(礼拝所不敬罪というのもあります)、所有者はお寺か、墓石を建てた人だから、、などとあまり口を挟めば、それは野暮という気もしてきます。

ところが、そのお墓の前には、第2の墓石のようなものがあり、「こちらのほうを削って下さい」といった趣旨の看板が立っているというのです。

削って下さいと書いてあるから、一かけら持っていく分には全く問題ないと思うのですが、何か違うような、おおらかでオッケーになってる感じを受けるのは、私だけでしょうか。                                     (2022年10月24日 文責:原田大士)