時事ネタを切る(5)

前回に引き続き、東池袋暴走事故の話です。上級国民だから逮捕されないんだ!なんて感情的な批判が飛び交っている注目事件ですが、前回解説した通り、けがの状況や年齢的に、在宅で捜査を受けるのはやむを得ないだろうと思います。良くも悪くも前例通りということです。

先日、ついに判決が出ましたので、今回は、裁判や判決について解説していきます。

 

加害者は過失運転致死傷罪で起訴され、裁判の中では、「ブレーキが効かなかった」として無罪を主張していました。事故時以外、アクセルとブレーキは特に問題なかったわけですし、「ブレーキを踏んだのにどんどん加速していった」という加害者の供述を聞けば、「それはまさにアクセルを踏んでるのでは…」と思うのですが、弁護人としては、そう主張するほかないのでしょう。ちなみに、事故車両の外側を修理して(電気系統は手を付けず)走行させたところ、ブレーキは作用したという検証結果があったようです。

 

最終的に、検察官は、禁錮7年を求刑しました。「2人殺して」7年、しかも禁固かよ!なんて巷では批判されていますが、7年は法定刑の上限です。また、過失による事故の場合、基本的に禁錮刑が求刑されます。軽い印象があるのは、これが過失による罪だからです。酒や薬物を飲んで、とか、(走り屋のように)猛スピードで運転していて、という話になると、危険運致死傷罪という故意の犯罪になり、1年以上の有期懲役ですから、最大20年まで懲役を科すことができました。結局、今月2日の判決は、禁錮5年で、求刑からすれば相場通りです。

こうしてみると、結局、ほぼ全ての手続きにおいて、特別な経過はなかったということになります。感情的にモヤモヤするのは、高齢者が事故を起こした場合の法律の不備が理由と言わざるを得ません。

さらに私たちを悩ませるのが、年齢的に、おそらく収監されないということです。刑務所は介護施設ではありませんから、車いす生活の90歳の高齢者を収監する可能性は低いと思います。そもそも、公判でも謝罪しなかったところをみると、おそらく控訴するでしょう。覆る可能性はほぼありませんが、控訴しない理由もありません。そうしてだらだらと時間が過ぎていく中で、天寿を全うするとなると、本当に被害者がいたたまれません。高齢化社会の中で、高齢者の運転免許については、もっと真剣に議論すべきだと思います。

 

グルメ弁護士のつぶやき

やっとレトルトカレーができました!まず店頭のみで販売していまして、常連さんに味見がてら買ってもらっています。色々なホルモンを入れているのですが、熱の具合で脂が溶け過ぎたり、更新料の風味も変わるようで、商品開発の醍醐味を味わっております!                                                                                (2021年9月7日 文責:石﨑冬貴)