【事業承継編】拒否権付株式(黄金株)は本当に有効なのか?

みなさまは「黄金株」と呼ばれるものをご存知でしょうか。

 

これは、株主総会や取締役会での重要事項(合併、役員選任など)に対して拒否権を行使できる、会社法108条1項8号に基づく特権的な種類株式のことです。事業承継の指南書などでも頻繁に紹介されており、実際に親族内承継や従業員承継の現場で活用されているケースも散見されます。

経営者としては、「自分の目が黒いうちは、後継者に好き勝手させたくない」と考えるのは自然な心理かもしれません。しかし、制度の本質を十分に理解せぬまま導入し、後に手痛いしっぺ返しに遭う事例も増えています。
拒否権付株式は、確かに強力な制度です。しかし、重要なのは「会社の決定を妨害することはできても、会社を動かす意思決定はできない」という点です。以下の2つの事例で考えてみましょう。

 

1.後継者に代表取締役の地位とほとんどの株式を譲り、先代社長が「拒否権付株式1株」のみを保有して取締役に居残ったとします。その後、両者が対立し、先代社長が任期満了による退任を迫られた場面を想像してください。このとき、先代は退職金を請求できるでしょうか。 結論から言えば、非常に困難です。拒否権付株式は「退職金を支給しないという決議」を拒否することはできますが、「退職金を支給する」という決議を強制することはできないのです。

 

2.経営者が資産管理会社を立ち上げ、自己資金を貸し付けて不動産を購入したケースを考えます。節税対策として早期に株式の大部分を後継者へ贈与し、経営者は「1株の拒否権付株式」を保持しつつ、会社から貸付金の返済を少しずつ受けていました。ここで後継者と対立が起きると、会社側(後継者)が任意で返済に応じなくなるリスクが生じます。拒否権を持っていたとしても、会社に支払いを命じる力はありません。結局、債権回収のために訴訟を提起し、自ら関わった会社の不動産に強制執行をかけるという、泥沼の事態に発展しかねません。

 

京都大学名誉教授である龍田節先生は「(拒否権付き株式は)黄金株と呼ばれることもあるが、おこがましい名称でありウィルス株とでも呼ぶのがふさわしい。」という名言を残しています。

有効な制度ではありますが、ぜひ弁護士のアドバイスの下、導入してください。

 

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年末年始、ふるさと納税で溜まった日本酒を飲んでいたため、新たな日本酒情報はありません笑。最近は、福井県のへしこを酒の友にして、チビチビ嗜んでおります。                                                        (2026年2月2日 文責:杉浦 智彦)