退職に関するトラブルについて(17)

近年、「来月末で辞めます。有給が10日あるので、最終出勤は明日です」といった一方的な申し出がなされることが増えています。

企業側としては引継ぎや業務整理のために「出勤してもらわないと困る」というのが本音ですが、労働者側の「有給を使い切って辞めたい」という要望も無視できません。

 

労働基準法では、有給休暇は「労働者の申請により取得できる権利」とされています。原則として、会社はこれを拒否できず、「退職時までに残っている日数をまとめて使いたい」という申出も認められる傾向にあります。
ただし、業務上の支障が大きい場合は「時季変更権」(会社側が取得時期を調整できる権利)の行使も可能とされています(※ただし退職日を超えての変更は現実的には不可)。

企業としてできる3つの対応策は、以下になります。
① 最終出勤日と退職日を明確に区切る
「有給取得に入る前に業務引継ぎを完了させる」ことを就業規則や口頭で明示しておく。引継ぎ日=最終出勤日、有給の始まり=退職までの調整期間、という意識づけが有効です。
② 就業規則に「退職時の有給消化ルール」を定める
「原則、業務に支障のない範囲で取得可能」「事前に引継ぎ完了が必要」など、就業規則で定めることで、運用に一定の枠を持たせることが可能です。
③ 残業代・有給消化・退職日などを「退職合意書」で整理
トラブル防止のため、双方で納得のいく退職条件を書面化するのも有効です。

 

書面・規則・合意形成を通じて、実務に即した運用を心がけることが、継続的な職場の安定につながります。

 

日々の雑感

気がつけば10月も終盤。朝晩はすっかり冷えるようになり、ようやくスーツの上着を素直に着る気温になってきました。この時期になると、裁判の期日調整も「年内か年明けか」という話になり、少しずつ年末の気配を感じ始めます。

                                                                                                                 (2025年10月29日  文責:下田 和宏)