【労働裁判例を知り、会社を守る!】第11回 就業規則を周知していなかったため無効に・・・?

今回は「就業規則を変更していたが、それを周知していなかったため、変更後の就業規則は無効」と判断された裁判例(東京高等裁判所平成19年10月30日判決)をご紹介いたします。

この会社は、写真フィルムの加工・販売を営む会社でした。
  あるときこの会社では、就業規則の内容を変更し、従業員代表からの意見書や労基署への届出などの手続もしっかり行いました。
変更内容は、退職金の計算方法を厳しくする(低額になる)というものです。
そして、退職したある従業員が、会社に対して「変更後の就業規則は無効であるため、自分の退職金は変更前の就業規則に基づいて算出されるべきだ」と主張して、訴訟を提起しました。

  裁判所は、「変更後の就業規則は無効であるため、変更前の就業規則の退職金算出方法が未だ有効である」と判断し、追加で約786万円の支払をすべきという判決を出しました。この裁判例で、変更後の就業規則が無効と判断されてしまった理由は何なのでしょうか…?
最大のポイントは、「変更後の就業規則が周知されていなかった」ことです。
大前提として、就業規則は周知していなければ無効になるおそれがあるのですね。

 この会社では、就業規則変更後の全体朝礼で、就業規則の変更についての説明をしていました。ただし、その議事録や説明文書など、客観的な証拠が残っていなかったのですね。裁判になってしまうと、裁判所は「客観的な証拠」を最重要視します。
 なので会社としては、朝礼で説明したのであればその議事録や説明文書などのを配布しておくべきだったのですね。

加えて、就業規則変更の説明会を開く、就業規則のコピーを配布する、見やすい場所に常に設置する、などの方法が考えられます。

就業規則は周知しておかなければ意味が無いという点は、あらゆる場面で頭に入れておきたいことですね。

 

弁護士の徒然草

完全に真夏の暑さですね。暑さだけでなく湿度も物凄く高く、いわゆる不快指数が高い状況が続いております。私は非常に暑がりなので、数分外を歩いただけですぐに汗だくに…。運動の際であれば思いっきり汗をかきたいのですが、仕事中は出来るだけ汗をかきたくなく、快適な室内で行わせていただいています!                   (2025年7月7日  文責:佐山 洸二郎)