【労働裁判例を知り、会社を守る!】第7回 副業が発覚したから解雇した・・・?
今回は「副業が発覚したとしても全てのケースで解雇出来るわけではない」と判断された裁判例(東京地裁平成13年6月5日)をご紹介いたします。
この裁判例の会社は、貨物輸送業を営んでいました。
そして、ある従業員が、「輸送先で家電製品の払下げを受けてリサイクルショップに持ち込んで代価を得る」という副業をしていたことが発覚しました。
会社は、その従業員を、解雇したのですね。しかしながら、裁判所は「解雇は無効」と判断しました。会社に無断で副業をしていたにもかかわらず、なぜこのような判断になったのでしょうか…?
法的に、副業による解雇は「それにより業務に支障が生じた場合」や、「会社の秩序への影響がある場合」に認められるとされています。
このケースでは、これらの事情が認められなかった上に、実際にどこまで副業をやっていたのか会社としての調査が不十分だったとされています。
裁判では「副業は、年に1~2回程度あったかもしれない」という証明しかなかった上に、会社としてそれ以上の調査をしていなかったことが明らかになっています。
さらには、会社としては解雇よりもかなり以前に、そういった副業がなされていることを黙認していたかのような事情も出てきていたのですね。
それにより、これらの副業により、業務に支障が生じていたり、会社の秩序に影響があるとは言えなかったのですね。
ただ、これは逆に言えば…「この副業の頻度が多かったり、会社の評判が落ちたりしていたら、解雇も認められた可能性がある」ということなのですね。
副業を完全に禁止することは出来ませんが、会社としては、どういう条件の下で副業を認めるのかを就業規則などで明記し、また許可申請制度を整備しておくなどした上で、会社として黙認出来ない副業が発覚したらしっかり事実調査をする必要があるということですね。
弁護士の徒然草
今は様々なSNSで、副業を勧めるような投稿や広告がかなり増えてきているような印象です。法的にも「あらゆる副業を禁止して良い」というわけではないですので、会社として副業をどこまで禁止するかは悩ましい問題です。会社にとっても従業員にとっても双方にとって望ましい副業形態の構築が理想ですね。 (2025年2月10日 文責:佐山 洸二郎)
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