【労働裁判例を知り、会社を守る!】第4回 同一の労働には同一の賃金を?

今回は「同一の労働をしているはずなのに、正社員と契約社員に同一の賃金(手当)を支払っていなかったことが違法」と判断された裁判例(最高裁判所平成30年6月1日)をご紹介いたします。まだかなり新しく、かつ有名な裁判例なので、ご存知の方も多いかと思います。

この裁判例の会社は、運送会社でした。
そして、一般の企業と同じく「正社員(無期雇用契約従業員)」と「契約社員(有期雇用契約従業員)」の両方がいらっしゃいました。
この裁判例で問題となったのは、同じ業務を行っている正社員と契約社員に、同様の手当を支給していなかったという点です。
同じ「運送業務」を行っていたにも関わらず、正社員には「無事故手当」「作業手当」「給食手当」「皆勤手当」「通勤手当」「住宅手当」を支給していた一方で、契約社員には支給していなかったのですね。
契約社員の方からしたら「同じ業務を行っているにも関わらず、なぜこんなに給与額が違うのだ」と不満に思っても仕方ない状況ですね。
裁判所は「無事故手当」「作業手当」「給食手当」「皆勤手当」「通勤手当」について、業務内容が同じなのであれば、正社員にだけ支給するのは違法だと判断しました。
これらの手当は、正社員にだけ支給するという合理的な根拠が無いからですね。

その一方で、「住宅手当」については正社員にだけ支給していても違法ではないと判断しました。
その理由として、この企業では正社員にのみ転勤の可能性があり、転居に伴う特別な住宅費出費が想定されるため、正社員にだけ支給する合理的な根拠があるからだと示されました。

 

この一連の判断は、いわゆる「同一賃金同一労働」についてのもので、給与などの異なる取扱いについて「雇用形態」ではなく「業務の実態」から設定しなければならないという、裁判所及び労働法の考え方が示されたものになります。

 

弁護士の徒然草

たまにこの裁判例の会社のロゴが入ったトラックを見かけると「今は同一労働同一賃金の点は大丈夫かな」「昼食の手当は支給されてるかな」などと思ってしまいます。…職業病とは言え、余計なお世話ですね!しまいには、運送会社のトラックを見ただけでこの裁判例を思い出して、そういうことを考えてしまったりもします。。               
…一旦法律の事は忘れて、自分も昼食をとります!                                 (2024年10月21日  文責:佐山 洸二郎)