企業経営にまつわる刑事事件 第9回 窃盗(2)従業員が会社の機密情報を持ち出す行為は「窃盗罪」といえる?

 「窃盗罪」といえば、前回お話した「コンビニのおにぎり」「他人のポケットの財布」など、基本的には「物体」について成立する犯罪です。

 

 では、例えば…従業員さんが会社の機密情報を持ち出す行為には、窃盗罪は成立するのでしょうか?

 

 これも、機密情報を「物体」として持ち出したかどうかという点で結論が分かれます。

 

 例えば従業員さんが、会社所有のUSBメモリ(会社の機密情報入り)を持ち出してしまった場合には、単純に、会社のUSBメモリという「物体」を盗んだという意味で、窃盗罪が成立します。

 

 それでは…「従業員さんが、自分の所有しているUSBメモリを会社のパソコンに挿して、機密情報をコピーして持って帰ってしまった」場合はどうでしょうか?

 

 実は、この場合はあくまでも自分のUSBメモリを持って帰っただけという判断になり、結論として窃盗罪は成立しない可能性が高いというのが裁判所の考え方です。持って帰ってしまった機密情報の使われ方次第(例えば競業他社に漏らしてしまうなど)では就業規則や不正競争防止法違反となる可能性もありますが、窃盗罪に比べるとそのハードルは高くなります。

 

 従業員さんに自由に自分のUSBメモリなどを使用させているという会社さんも多いかと思います(むしろそれが一般的ですよね)。

 

 ただ、これは機密情報流出のおそれがあり、よく考えるとなかなか怖いものだということがわかりました。
一番理想なのは「USBメモリを会社が全て用意して貸与する代わりに、私物のUSBメモリは使用禁止とする」という形にすることなのかなと思います。

 

弁護士の徒然草

突然の真夏日です。昨年のこの時期のこの欄では「法曹三者のクールビズ模様」のお話をさせていただいた気がします。ところで、裁判の日の弁護士の服装に特に決まりがあるわけではありませんが、ほとんどの弁護士はしっかりスーツを着て臨むものです。ただ、中にはツワモノがいらっしゃるようで、アロハシャツにサンダルで裁判に出廷するという弁護士もいるようです。いくら裁判所での規則がないからといっても、アロハシャツにサンダルだと、裁判官の印象も悪くなりそうな気が……、、弊所の弁護士は、真夏でもしっかりスーツを着て裁判に出廷しておりますので、ご安心下さい!

                                  (令和元年5月27日 文責:佐山 洸二郎)