副業の法的問題(3)

政府が音頭を取って進めている「副業」ですが、当然のことながら反対している人たちも沢山います。

 

まず、副業に対して反対している会社が相当数数あります。副業を認めることによって、本業の法に悪い影響が出るのではという心配、会社の機密情報が流出するのではといった可能性などを考えるわけです。これらの懸念事項について、法的にどう考えるのかは、別途検討してまいります。

副業に反対するのは、会社だけではありません。かなり多くの従業員や労働組合などが、副業を進める政府の考えに反対しています。その中には、「副業などしないでいいだけの給料を出してくれ!」「これ以上働かせるつもりか!」といった声もあります。ある意味、予想される反応ですね。しかし、副業推進に反対する従業員の理由は、こういう分かりやすいものばかりではないのです。今回の副業推進政策によって、「今まで法的に認められてきた、正社員の優遇に影響が出るのではないか?」と心配して、「副業」に反対する人たちがいます。

 

 

欧米の従業員は「就職」するが、日本の場合は就職ではなく「就社」するなんて、かなり昔から言われてきました。何の「職」に就くかが重要ではなく、どこの「会社」に入るのかが重要ということですね。一つの会社に入れば、会社内ではどのような「職」に回されても、会社に忠誠心を持ち、会社のためだけに文句を言わずに働かないといけません。(欧米では、技術者という「職」についたものを、勝手に会社が「営業」に回すなど、原則的にあり得ません。)

 

その代わり、「社員」という「身分」はよほどのことがない限り奪われずに、法的に保証されています。副業推進により、会社だけに忠誠を尽くすという日本の制度が崩れていき、ひいてはそれが従業員の法的地位を弱くするのではと心配しているわけです。平成29年7月10日発行 (文責:大山 滋郎)