外国人雇用の法務(11)

前回まで「特定技能」という在留資格について解説していましたが、今回は、少し似た制度である「技能実習」という在留資格について解説します。この「技能実習」、近い将来に大きい改正が予定されておりますが、「特定技能」とも切って切れない関係ですので、そのあたりについても触れていきたいと思います。

 

「技能実習」は、元々、日本で外国人実習生の人材育成を通じて、日本の技術、技能、知識を海外に移転させ、国際協力を推進することを目的として設立された制度です。制度自体は、労働力の確保を必ずしも目的としておらず、実習や講習を通して、実習生に特定産業の特定の作業・業務についてスキルを身に着けてもらい、また同時に日本語も勉強してもらうことに主眼があり、実習生が帰国することも制度に組み込まれています。

 しかし、実態として、日本の在留資格が、専門的分野に特化して発展した背景があったことから、技能実習生は、農業漁業や食品製造業、金属加工業、介護事業などの現場職の人材枠として求められてきた側面があります。
 そのような中、前回まで解説して来た「特定技能」という資格が誕生し、人材確保を目的とした枠組みが正面から設けられてきたことによって、産業分野の人材ニーズに合致する制度に、「技能実習」自体も少しずつ捉えなおされてきたように思います。
 たとえば、技能実習には、1号、2号、3号がありますが、2号を優良な成績で終了した者には、特定技能1号への道が開かれています。つまり、技術技能面で、技能実習の一段上に、特定技能という制度が乗っており、緩やかにシフトが出来るようになっているのです。

そして、国際協力の人材育成がモットーだった「技能実習」を改正し、「特定技能」のように人材確保という趣旨に舵を切ることが、現在議論されています(つづく)。

 

物好き弁護士のつぶやき

子供が生まれて嬉しい反面、数少ない趣味である美術鑑賞が自然と減ってしまうのが悲しいです。つぶやきと鑑賞の順番が逆な気はしますが、今上野でやっているデ・キリコ展は絶対見に行きます。パリのシュルレアリスム運動は、キリコの影響あってこそだと思います。学生のころ、国立新美術館で開催されたシュルレアリスム展(ポンピドゥー・センター所蔵作品)は激アツでしたが、今回はどうでしょうか。弁護士になっても、ちょっとくらい白昼夢を見ていいと思います。

                                                                                                                    (2024年7月17日 文責:原田 大士)