【労働裁判例を知り、会社を守る!】第1回  準備時間も労働時間?

今回は「準備時間が労働時間にあたるかどうか」が最高裁判所まで争われた有名裁判例(平成12年3月9日)をご紹介いたします。この問題は、実際に生じる給与の額が大きく変わりますので、非常に重要な点ですね。

 

この裁判例では、造船業を営む会社での労働時間が問題となりました。

 

造船所で実際に造船作業をしている時間が労働時間にあたるというのは、常識的にも疑いようがないですね。

では、造船作業の始業時刻までに「造船所で着替えをする時間」「準備体操場まで移動する時間」「資材を移動させる時間」「散水を行う時間」などは労働時間に含まれるのかどうか?ここが争われました。

結論としては、最高裁判所は、これらの時間も労働時間にあたるとの判断をしました。

裁判所は、労働時間とは「会社の指揮命令下に置かれた時間」と考えました。

始業時刻までの諸々の準備作業も「会社の指揮命令下に置かれた時間だから」労働時間にあたるとの判断がなされたのですね。

ここで注意が必要となるのは、日本中全ての会社において同じ結論になるとは限らないという点です。

この会社では、「上記の諸々の作業を、始業時間までに完了させておくこと」が義務付けられていました。

 

なので裁判所に「会社の指揮命令下」だと判断されたのですね。逆に言えば「会社の指示ではない」「会社からはやらないように指示されている」のに、あくまで自発的に資材の移動や散水などの準備をしていたのであれば、労働時間にはあたらない場合もあるのですね。

 

労働時間にあたるかどうかは「会社の指揮命令下にあったかどうか」が実質的に判断されるということですね。

 

弁護士の徒然草

一気に湿度が上昇し、いよいよ真夏の幕開けという気候ですね。
少しでも散歩をするとすぐに身体がベトつきはじめてしまうので、なかなか散歩がし辛い季節になってきました。
また、運動をするとすぐに汗だくになりますが、これが「湿度によるもの」でなくて、自身の代謝により発散された汗によるものだと信じたい今日この頃です。。                                                             (2024年7月8日  文責:佐山 洸二郎)