会社に役立つ刑事豆知識(14)

前回、在留資格の「技術・人文知識・国際業務」について、まずそれがどんな資格か、説明しました。この資格は、エンジニアや、総合職や通訳として活動するために利用される資格です。
今回は、この資格の特徴が顕著に表れる配転の場面を例にして、この資格の柔軟さと注意点について解説します。

 

「技術」「人文知識」「国際業務」は、独立した3つのジャンルでもあり、それぞれに対応する職業が異なっています。例えば、エンジニアとして就職をしたい人は、「技術」の在留資格要件を満たすことを示して申請をすることになりますし、法律業務であれば通常「人文知識」の資格要件をクリアしなければ在留資格が取れません。

 

 しかし、3つのジャンルは「技術・人文知識・国際業務」として、ひとつのグループにまとめられた資格でもあるのです。こんな事例を考えてみましょう。
例えば、会社の通訳・翻訳業務をするために、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して働いていたAさんを、配置転換で、経理や法務などを扱う総合職に配転することは可能でしょうか。

 

入社時、Aさんは「国際業務」の活動をすることを前提に、在留資格を申請したはずです。ですから、一見「人文知識」という別の仕事をするために、資格申請をし直さなければならないように思えます。
しかし、答えは、新たな資格変更申請は不要です。Aさんが取得した資格は「技術・人文知識・国際業務」が一つになった資格なので、在留資格の範囲内で配転をしても、資格の取消や不法就労にはなりません。

 

もっとも、在留資格更新の際に、更新許可は受けなければなりません。その際には、更新後の業務との関係で、その外国人が在留資格を取ることが出来るかが問題になります。Aさんがもし更新後も配転先の業務を行うのであれば、「人文知識」に求められる条件をクリアしなければならず、クリアできないと更新ができなくなる可能性があるので、注意が必要です。                                                                                                           (2024年2月19日 文責:原田 大士)