実録・労働審判➁
前回より、労働審判についてご案内しています。
労働審判という手続の特徴についておさらいすると、①非公開で、②迅速に、③柔軟に紛争を解決できる点になります。
この②迅速にという点は、当事者にとってはメリットといえます。1年以上も争いが続く裁判とは違い、長くても数カ月で決着するため、対応する当事者の負担が軽くなることは間違いないでしょう。
その一方で、大変なこともあります。それは、労働審判を申し立てられた側が、第1回期日までに準備する時間が少なくて忙しいことです。
労働審判が申し立てられると、裁判所は、申し立てられた側(申し立てた側を「申立人」、申し立てられた側を「相手方」といいます。)へその旨書面で通知します。
その通知では、第1回期日の日付と、第1回期日までに提出する反論のための書面の提出日も指定されています。いきなり裁判所から書面が届き、そこに「〇〇日に〇〇裁判所まで来てください。〇〇日までに反論書面を提出してください。」と一方的に指定してくるわけですね。
困ったことに、この日付は基本的に変えることができません。しかも、それぞれの日付は通知の日からかなり近い日が指定されています。
例えば先日扱った事件では、4月1日付けの通知が届き、4月15日までに書面を提出して、4月25日の第1回期日に出席せよと裁判所から指示がありました。
このように、労働審判では2週間程度で書面を準備しなければいけないという場合が少なくありません。しっかりと準備するためには、申立人の主張を吟味し、関連する事実を調査して、それを裁判所に納得させる内容にまとめなくてはいけません。当然、会社と弁護士とで入念な打合せも必須です。
このようにみると、相手方として、反論書面を用意するためのスケジュールに余裕がないことが分かるでしょう。
そのため、労働審判を申し立てられた際の初動対応で最も重要なことは、すぐに弁護士に相談するということです。ご相談が早ければ早いほど、余裕を持って準備することができ、万全の態勢で審判期日に臨むことができるでしょう。
Atty’s chat
9月に、長野県は渋峠で自転車レースに参加してきます。志賀高原で一泊するのですが、ここはサルと人間が共存(?)していることで有名です。ホテルで休んでいると、館内放送で「現在、ホテル周辺にサルの大群が押し寄せています。鍵が開いていると窓から入ってきます。窓の鍵を閉めるようお気を付けください。」なんて注意喚起がされます。とてもユニークな所ですね。サルに気を付けつつ、レースを楽しんできます。 (2023年8月14日 文責:越田洋介)
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