会社に役立つ刑事豆知識(7)
これまで、数回にわたり、防犯カメラをテーマにして扱ってきました。
前回コラムの末尾で「防犯カメラは(会社の)どこまで設置できるか?」という問題をたて、地方公共団体のガイドラインからは、具体的な基準までははっきりしないところまでを確認しました。
とはいえ、ガイドラインでは、「犯罪の予防効果の向上と個人のプライバシー保護との調和」がうたわれています。結局、防犯カメラをどこに設置して良いのかという限界についても、撮影される人のプライバシーを配慮して考えることになります。
プライバシーは、その人がいるシチュエーションよって、重要度や価値が違うと考えられています。たとえば、道路や公共施設では、外見を他の人に見られるのは自然なことですし、写真を撮った際、写り込んでしまうこともあります。しかしながら、家の中やトイレ内の姿というのは、他の人に見られることを想定していません。当然のことながら、こういった空間でのプライバシーの重要度は高いのです。
そういった視点から、防犯カメラの限界を考えてみます。まず、外に設置する防犯カメラですが、公道などの通行人の姿が入っていても、そこは大きな問題にならないでしょう。
しかし、特定の家の玄関先などが見えるようなカメラ設置は、その住人のプライバシーを侵害する恐れがあります。オフィスの中で設置する防犯カメラはどうでしょうか。判例などが蓄積されているわけではなく、厳密な線引きは難しいですが、更衣室の中に防犯カメラを設置するのは、更衣室の利用者のプライバシー侵害になる可能性が高いので、避けた方がいいでしょう。更衣室ではないロッカーの目の前に、カメラを設置するのは問題ないでしょう。
物好き弁護士のつぶやき
コラムを投稿させて頂いているさなか、まるで流行りなのかと思わせるほど、強盗事件が相次いでいます。銀座8丁目の高級時計の事件など、記憶に新しいです。あそこまでオープンにやってしまうと、もはや防犯カメラどころか、通行人に撮影され、SNSで拡散されるという始末です。泥棒にもプライバシーはあるでしょうが、そのような権利を主張する立場に無いですし、動画の拡散には、防犯予防や犯人探索といったような正当性が、一見あるように見えます。
しかし、拡散された動画は、面白いイベントをシェアするような、無責任な受容をされた節もあると思います。逆に、泥棒が、撮影されることを意識して白昼堂々と行っていたのだとしたら、、などと思ってしまうような、劇場型の事件だったように思います。 (2023年5月15日 文責:原田大士)
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