会社で写真を用いることのメリット・注意点(11)

会社の広告などで写真を用いることの注意点をご紹介して、このコラムも11回目となりました。そろそろ別のテーマに替えようかとも考えております。

今回は、前回のコラムに引き続き、著作者の許可なく著作物を使える可能性はないかということを探ります。

そこで、前回コラムの最後で掲載した設例について考えてみます。家具や家のデザインを扱っている会社が、作家のポスターや掛け軸を屋内のレイアウトに用いて、内装写真を撮影して宣
伝する場合を考えてみましょう。

そのような写真広告は、普通に考えれば、家具やデザインのクオリティを主役とした内容になりそうです。つまり、ポスターや掛け軸は、あくまでレイアウトの例であって、著作物自体の表現内容で顧客を呼び込んでいるわけでなく、許可なく写して使えそうにも思えます。

ただし、このような場合であっても、写真に写るポスターや掛け軸の大きさには注意が必要です。つまり、質だけではなく、量の観点からも、写った著作物がオマケであると言えるような大きさでなければならないということです。

特に、作品を鑑賞できるよう大きさで写して広告に用いてしまうと、写真には著作物がありありと写っているわけですから、その著作物のコピーから利益を得るという著作権を害してしまうでしょう(まさにコピーライトですね)。

実は、設例と似た事件があります。「雪月花」と書かれた掛け軸を写し込んだ屋内照明器具の宣伝用カタログが、著作権法違反になるか争われた事件です。判決は、違反にならないと判断をしましたが、掛け軸の写真は、実物の約50分の1に縮小されていたそうです。

この判決は、この事案限りのものと言われていますので、その点はご注意下さい。

 

物好き弁護士のつぶやき

最近、プライベートの飲み会で、いわゆるインフルエンサーの方とお会いしました。インフルエンサーというのは、SNSで情報発言力があって、その人の投稿が、他の人の購買活動に影響を与えるような人のことです。最近では、企業がインフルエンサーに商品の投稿をお願いして、写真を撮ってもらい、インスタグラムやTwitterで宣伝してもらう、ということも多いと思います。

動画の編集、コメント添付など、なんでもお一人でやってしまうのだそうです。副業とはいえ、依頼料も、広告費に見当った相当額でご案内し、今では予約待ちの状態とか。

その方は、撮影の許可を得ておりますし、その方が宣伝するから経済的な価値が生まれるわけですので、内容自体の許可も下りやすく、問題が起きないのだと思います。

そう考えると、やはり撮影には許可のあるに越したことは無いなと思う一方で、許可があろうがなかろうが、政治家が世界の「美女」をソーシャル・ディスタンスで撮影して投稿するのは少しいかがなものかとも思うのでした。

                                                                                                                   (2022年6月7日 文責:原田大士)