会社で写真を用いることのメリット・注意点(10)

今回は、著作権を持っている人に許諾を取らないで、著作物が映りこんでいる写真を用いることが出来る可能性について、前回に引き続き解説したいと思います。

前回のコラムでは、「メインではなく、著作物をオマケのような形で撮影した写真」を、一定の条件で、許可なく利用できるという法律がある点を、お伝えしました。

ただ、こちらの法律は、令和2年の著作権法改正で複雑になってしまい、何が違反で何が違反でないか、曖昧な点もあります。 

そこで今回は、違反を避けるための基準が少しでも無いか、考えたいと思います。

 

まず、大きな基準として「その写真に写った著作物で、経済的な利益が生まれるかどうか」という点が、一番重要な基準になるでしょう。

例えば、極端ですが、あるお店にミッキーマウスのぬいぐるみがたくさんあって、「うちのお店に来れば、ミッキーマウスのぬいぐるみに会えます!」という呼び込みのもと、ミッキーマウスの映った室内写真を使ってお店が宣伝をしたとしましょう。このような写真を勝手に使えば、それは著作権法違反になるでしょう。

この場合、ミッキーマウスが客引きになって、お店の利益になるかもしれませんよね。しかし、その利益には、本来著作物あってこその部分があり、著作権を持っている人にも還元されるべきだと考えられます。ですから、著作権違反になってしまうのです。

 

では、今度は、家具や家のデザインを扱っている会社が、作家のポスターや掛け軸をレイアウトに用いて、内装の写真を撮影して宣伝に使うというのは問題ないでしょうか。内装写真には、著作物であるポスターや掛軸が映ってしまっています。

ですが、先ほどのミッキーマウスのお店の例とは少し事情が違います。決してそのポスターや掛け軸で、お店の宣伝をしているというわけではなく、あくまで家具やデザインのクオリティで勝負しています。

ですから、このような写真を利用できる可能性はありそうです。しかし、注意すべき点はあります。次回は、設例に似た判例を紹介しながら、その注意点をお伝えできればと思います。

 

物好き弁護士のつぶやき

先ほどの「ミッキーマウスの館」ですが、もし仮にそんなお店があったら、そもそもそんなに宣伝には困らない気もします。来客した人が面白がって写真を撮って、彼らが写真をWEBにアップしてくれれば、勝手にそれが呼び込みになるからです。その場合、著作権違反の問題はアップした人には起きても、お店には基本的に起きません。
私の学部時代の大学近所に、キャラクターの置時計がたくさん置いてある定食屋さんがありました。牛煮込み定食が、400円もしなかったと思います。その安さといいお店の雰囲気と言い、学生に大人気でしたが、私の卒業後数年して閉店したそうです。それでもWEBには、写真が少し残っています。           (2022年4月19日 文責:原田大士)