会社で写真を用いることのメリット・注意点(9)

今回も、前回に引き続き、他人が創作した絵やポスターを、写真に撮って用いる際の法律問題について取り上げます。

 

前回、私は、他人の著作物を被写体の一部として撮影して用いる際には、その絵や写真の著作権を持っている人に許可を貰うことが本来は望ましいとお話しました。

ただ、その原則がどんな場面でも適用されると、写真を使うことがとても窮屈になってしまいます。そこで今回は、許可なく他人の著作物を利用できる場面をご紹介致します。

著作権法の中には、他人の著作物が写った写真を利用しやすくするための規定が存在しています。令和2年の法改正で、その規定がバージョンアップしましたので、改正点をふまえながらご解説します。

 

改正前の著作権法では、子供がキャラクターのぬいぐるみを抱いて撮った写真をSNS上で挙げると、ぬいぐるみの著作権を侵害する可能性がありました。とても窮屈ですね。

令和2年の法改正で、規定がバージョンアップされたことで、この問題は解消されたといわれています。子供にキャラクターのぬいぐるみを持たせた記念写真を自分のSNSなどで投稿しても、基本的に問題なくなりました。

改正された規定は、上の子供の写真のように、「メインではなく、著作物をオマケのような形で撮影したもの」を、一定の条件で、自由に利用することを認めています。

 

この規定は、会社の様子を写真にして会社のサイトなどで紹介する場面に、活用できます。例えば、社員全員で撮った集合写真の後ろに飾ってあった絵が写りこんだ場合、飾ってある絵やポスターを入れてオフィスの室内を撮影した場合です。よほど絵やポスターが大きいものでない限り、写真を自由に使うことができるでしょう。

ただ、この規定、改正でより複雑になり、何が違反で何が違反でないか、曖昧な点もあります。そこで次回は、違反を避けるための基準が無いか、お伝えできればと思います。

 

物好き弁護士のつぶやき

最近、海外の美術館のように、写真撮影が自由な美術館や展覧会が増えてきたような気がします。そんな中でも、写真をSNSでアップする際には、細かい条件を付けている展覧会もあります。
営利目的での利用禁止、作家名や作品名をしっかり記載したうえでないと認めないなどなど。
私が最近行った、写真撮影ができる展覧会のおススメは、東京オペラシティアートギャラリーのミケル・バルセロ展です。スペインの現代作家のダイナミックな絵画の多くが、撮影自由になっていました。写真では保存できない良さがあるのですが、私もついつい撮ってしまいました。

(2022年3月1日 文責:原田大士)