会社で写真を用いることのメリット・注意点(7)

前回までは、ビフォー・アフターの写真広告を素材にして、景品表示法などの規制を見てきました。

今回は、他のタイプの広告についても、景品表示法の規制の厳しいところと、反対に緩いところの、不思議なバランスについて解説します。

 

まず、商品を使った体験者の写真のビジュアルと一緒に、体験談を掲載している広告がありますね。

体験談の規制は厳しく、表示が、商品の効果や性能を反映したものであることはもちろんのこと、①調査した人数や対象者の属性、②体験談と同じような効果、性能が現れた割合③体験談と同じような効果、性能が現れなかった割合を明瞭に表示すべきとされます。

 

実は、「個人の感想です。効果を保証するものではありません。」という表示を載せただけでは、体験談を使った広告の規制を回避することは出来ないと言われており、①から③に述べたような細かい注意書きをすることで、「大体の人が同じ効果を得られる」というイメージを打ち消す必要があるのです。

①から③の掲載をすれば、「効果が無い体験者」のことも挙げなければならないわけですから、広告のインパクトが薄れてしまう感も否めません。体験談が厳しい規制を受ける理由は要するに、一般消費者に「自分にも同じような効果が得られる」と思わせる力が強いからと説明されます。

 

では一方で、よく我々が目にしている食べ物や薬のCMで、芸能人やモデルが美味しそうにしていたり、心地よさそうにしたりしているような広告には、何の問題もないのでしょうか。商品を買う人の中には、その芸能人やモデルに好感を抱いて、自分も芸能人たちと同じような満足を、商品から得ようと感じている人もいるはずです。

しかし、よく見かけるCMには、前述のような厳しい制限はありません。その理由は、あくまでCMの中の人は演技をしているに過ぎず、広告が会社の好感度や知名度といった、抽象的なイメージだけを表示しているからだと説明されます。

 

私も法律家ですが、なんだか上手く言いくるめられているような気分になるのでした。

 

物好き弁護士のつぶやき

先ほど挙げたCMがセーフなのは、具体的な商品の効果や性能を表示していない、つまり抽象的なイメージだからと言われます。ですから、逆に、体験談の形をとっていても、本当に「個人の感想」にとどまるようなフワッとしたものであれば、抽象的でセーフと言われる可能性はあります。ただ、それはそれで、まさにフワッと、擬音語擬態語がオンパレードの、不思議な広告が出来てしまいそうではあります。                                                  (2021年11月24日 文責:原田大士)