新・旧民法の適用基準をみる

皆さんご存じのとおり、昨年の4月1日に改正民法(新民法)が施行されました。施行から1年半ほどが経ち、多くの方が新民法の下での業務に慣れてきたのではないかと思います。

 

もっとも、新民法が施行されたからといっても、従来の民法(旧民法)が廃止されるわけではなく、両者が併存した状態で、事案ごとに新・旧民法がそれぞれ適用されることになります。

そのため、契約などが施行日を跨いでいる場合、どちらの民法が適用されるか、迷うこともあるかと思います。
今回は、具体例を用いて新・旧民法の適用基準を見ていきたいと思います。

 

例①)契約は2010年に締結し、継続的に契約関係にあったところ、20年1月に債務不履行があった。請求や訴訟は20年5月に行った。

⇒契約締結も債務不履行も施行日前の場合には、請求等が施行日後であっても、旧民法のみが適用されます。
したがって、遅延損害金は旧民法基準の年5%(商事は6%)となります。

 

例②)契約は2010年に締結し、継続的に契約関係にあったところ、20年5月に債務不履行があった。

⇒契約締結が施行日前でも、債務不履行が施行日後に生じた場合、そこから生じる遅延損害金については、新民法が適用されます。したがって、遅延損害金は年3%(商事も同様)となります。

 

このように、債務不履行から遅延損害金が生じる場合だけは、契約締結日ではなく債務不履行がいつ生じたかが基準となります。

 

契約における問題を検討される際に、ご参考いただけると幸いです。

 

Atty’s  chat

私が受けた司法試験は、旧民法下での最後の司法試験でした。民法の試験問題では、「錯誤無効」という改正によって無くなる有名な条文を使う設問があり、消えゆく旧民法への手向けのようなものを感じ、一抹の切なさを覚えたものでした。

                                                                                                                (2021年10月18日 文責:越田洋介)