懲戒処分で困らないために(5)懲戒処分の有効性のまとめ
これまで数回にわたって懲戒処分の有効性についてお話してきました。本当はまだまだ掘り下げていきたいところですが、懲戒処分の有効性というテーマはそれだけで分厚い専門書が一冊できてしまうほどのものです。なので、このシリーズではそこまでは立ち入らず、今回の総まとめをもって一区切りしたいと思います。
さて、懲戒処分の有効性を判断するための要素は種々ありますが、中でも重要な判断要素だとお話してきたのが、下記の3つでした。
①懲戒処分について、就業規則等に明確に定められてそれが周知されているか
②問題となっている非違行為が、①で定められている処分理由に該当するか
③科された懲戒処分が、問題となっている非違行為に対して相当であるか
それでは、それぞれをもう一度おさらいしてみましょう。
①については、就業規則等に定めるだけでは不十分で、それが周知されていることまで求められるという点が大切です。十分に周知されていない場合には、いくら明確に定めていても無効と判断されるおそれがあります。
②については、処分理由に形式的に該当するだけでなく、実質的にも該当する必要があります。例えば「職場の秩序を乱す行為」を処分理由に挙げている場合には、一般的に秩序を乱す行為とみなされるというだけでなく、事案ごとの個別具体的な事情を考慮したうえで、実質的に秩序を乱す行為であると認められる必要があるということです。実情を踏まえた慎重な判断が要求されると言えます。
③については、非違行為と処分のバランスということです。端的に両者が釣り合っているかという点はもちろん、より軽微な処分により問題の解決が図れなかったのかという点も重視されます。例えば、大きな問題を起こした従業員に対しても、いきなり懲戒解雇するのではなく、まずは休職・停職や降格といったややマイルドな処分を科すことで対応することができなかったのかといったことです。
これらが、懲戒処分の有効性を判断するうえで特に重要な要素です。
また、上では触れていませんが、就業規則等に定められている、懲戒処分を科すにあたっての手続きをしっかりと踏んでいるかという点も、同じく重要です。
処分を検討するにあたってこれらの点を意識するだけでも、後に処分をめぐって問題が生じるおそれを少なくできるのではないかと思います。
以上、懲戒処分の有効性判断に関するまとめでした。
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