時事ネタを切る(4)
自分で題材を決めておいてあまり乗り気がしませんが、今回は、東池袋で2019年4月19日に起きた事故の話です。
ご存じかと思いますが、当時87歳の高齢者の乗る車が暴走して、11人を死傷させたという事件です。被害者のうち、小さな子供とその母親の2名が死亡しているという重大事件であることに加え、加害者が元通産相の技官やクボタの副社長を歴任していたことから、逮捕されず現在も自宅で生活していることについて、「上級国民だからだ」なんて非難されています。本当に痛ましい事件で、自分が同じ立場なら何するか分からんなと思いますが、ここは弁護士ということで、中立的に解説していきます。
交通事故ですと、現行犯逮捕されることが多いですが、事件でも事故でも、加害者が怪我をして入院すれば、容体の快復を待って逮捕します。本件も骨折して1カ月入院していたようですから、私の経験上、どの警察でもそう判断したでしょう。私が実際に扱ったケースでは、事件を起こして逃げる最中に脚を骨折したという完全に自業自得なものでも、退院するまで逮捕されませんでした。その意味で従前の運用通りと言えます。
ただ、本件では、退院後も加害者は逮捕されませんでした。最終的にどのような理由で身柄拘束しなかったのかは分かりませんが、加害者は、事故時でもすでに87歳と高齢でした。また、パーキンソン病の疑いもあったそうです(そのため、医師から運転を許可できないと言われていたとか。。。)。私も、実況見分の動画を見ましたが、ヨロヨロで杖を突いていて、あれじゃ逃げられないなと感じました。
なんとなく、「重大な事件を起こす」=「逮捕される」というイメージですが、あくまで理屈としては、逮捕するかどうかは、逃げたり証拠隠滅したりするかどうかにかかります。「重大な事件を起こす」=「重い刑罰になるから逃げたり証拠隠滅する可能性が高い」=「逮捕される」という論法なわけです。本件は重大な事件ですが、逃げる可能性は低いでしょう。
したがって、本件は「上級国民」関係ないというのが私の感想です。もちろん、その運用や理屈自体がおかしいというのであれば別ですが。判決は来月2日が予定されていますので、裁判の問題点や判決については、次回お送りします。改めて被害者にはご冥福をお祈りします。
グルメ弁護士のつぶやき
6月下旬から、弊店でもお酒を提供することができるようになりました。と思ったら東京で再度、緊急事態宣言&酒類の提供禁止。でも神奈川は大丈夫!となったはずなのに、一転、神奈川県も独自緊急事態宣言という。。。本当に振り回されている感じです。マスク会食認証店とかいったい何だったんでしょうか。現在、申請中なんですが(笑) (2021年7月20日 文責:石﨑冬貴)
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