会社で写真を用いることのメリット・注意点(3)
今回は、写真の被写体に他人の権利が入り込んでしまう際の注意点についてご説明します。
広報の一環として、活気ある仕事場や良質な接客サービスをPRするために、従業員の写真を使って広告を作成したいという方もいらっしゃるかと思います。
従業員には「肖像権」という、「勝手に自分の姿を撮影されず、その写真を利用されない」という権利があります。
普通、広告用の写真を撮る際には、従業員に許可を取っているものでしょう。ですから、写真を撮影する段階では、大きな問題は起こらないかもしません。
しかし、広告を作成し、配布する段階になって、写真写りや広告での使われ方が思っていたものと違うと従業員が感じて、自分の写真を使わないで欲しいと言い出す可能性はゼロではありません。
そのような場合、従業員は、肖像権を根拠にして「自分の写真を載せた広告を配布しないでください」と主張して来るのです。
では、そのリスクを回避するために、どのような対策をしておけば良いのでしょうか?
対策としては、「肖像権同意書」という形で、従業員一人一人に写真撮影と写真利用の同意をとり、その同意を書面に残しておくことが、効果的です。こうしておけば、人格を傷つけるような広告を作らない限り、後から大きな問題になることは無いでしょう。
従業員の写真を用いた広告を作成する際には、是非、ご相談下さい!
物好き弁護士のつぶやき
写真を撮って、それを確認してみると、自分が思ってもいなかったものが写っていたり、意図していない写り方をしていたりする場合ってありますよね。
「欲望」(“Blowup,”ミケランジェロ・アントニオーニ監督,1967)という映画があります。1960年代のロンドンが舞台で、当時の音楽やファッションの盛り上がりも楽しむことが出来る映画です。
主人公は売れっ子カメラマンで、モデルのセンセーショナルな写真などを、普段は撮っています。ある日、カメラを手にして公園に散歩に行くと、中年男性と若い女性のカップルを見かけ、彼らを盗撮します。主人公が、スタジオで写真を現像して見ると、そこには、公園では気づかなかった異様な光景が写っていたのです。
写真を撮るときには意図していなかったものを見せる写真の効果は、現代思想や美術でたびたび取り上げられるテーマです。この映画も、写真の驚きの効果を見事に落とし込んでいます。「写真の出来事が本当に現実にあったことなのか」という問題にも、ミステリーのようなテイストで取り組んでいる素晴らしい映画です。興味のある方は、ご覧ください!
(2021年5月4日 文責:原田 大士)
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