民法改正が企業経営に与える影響
 第11回 物を預ける契約のルールが変わる?

物を預けたり預かったりすることを、法律上の堅苦しい用語では「寄託契約」と言います。

 

物流や倉庫業界の皆様にとっては御馴染みだと思いますし、そうでなくても、例えばホテルや旅館のクロークなどに荷物を預ける行為も、厳密に言うとこの寄託契約にあたります。

 

この寄託契約ですが、改正前の民法では「荷物を預けて初めて成立する契約」とされていました(法律上は「要物契約」と言います)。

ただ、法律の大原則は「口約束だけでも契約は成立する」です。寄託契約がなぜ元々「荷物を預けないと成立しない」というルールになっていたのかについては諸説ありますが、結局は現実の運用にそぐわないという実情があったようです。

そこで今回の民法改正では、寄託契約も「口約束だけで成立する契約」とされました(法律上は「諾成契約」と言います)。

これにより、実際に荷物を渡さなくても契約は成立することとなりました。

 

ただそれにより「契約をしたはいいけど、実際に荷物を渡すことができない場合」は、「契約が成立しているのに物がない」というちぐはぐな状態となります。

 

そこで改正民法は「預ける側は、実際に荷物を渡すまでは契約を解除できる」「預かる側は、実際に荷物を受け取るまでは契約を解除できる」という規定をしっかり作っています。(ただし、例外的に解除できない場合や、損害賠償が必要となる場合もあります。)

 

 …一般的な常識で考えれば「当たり前のことが当たり前に規定されただけではないか!」という気もしてしまいますが、実はこれまでの民法はそうでない部分も多かったのですね。

 

このコラムでは毎回同じようなことを申し上げてしまっておりますが「当たり前のルール」がいかに大切なことなのかが、今回の民法改正でよくわかります。

 

弁護士の徒然草

新型コロナウイルス(もはや「新型」と言って良いのかわかりませんが)との戦いは、完全にいたちごっこの様相を呈してきています。。
 ついには「酒を提供する店には休業要請」をする地域も出てきています。ただ、例えばこの横浜は一応観光地なのですが、土日は赤レンガや大桟橋に観光客が溢れかえっています。。観光や移動ではなく飲食店だけを狙い撃ちして、一体どれだけの意味があるのか、とても疑問に感じてしまいます。
 また、笑い話のようですが「遊園地に対して無観客開催要請」をしている自治体があるとの噂も。。

 (2021年4月26日 文責:佐山 洸二郎)