時事ネタを切る(2)

前回から、今号の時事ネタの解説をしています。今回は、飲食弁護士として無視できないあの話題。東京都から営業時間短縮の命令を受けたグローバルダイニング社が、都を訴えたという事件です。

ざっと訴状を見せてもらいましたが、まさに違憲訴訟という感じで非常に長い! 地裁段階でも数年かかるでしょうし、こういった訴訟は最高裁まで争いますから、何年かかるやら、というところです。

 

法的な解説をするとキリがないのですが、ポイントは、東京都が命令の根拠とした「緊急事態措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の営業継続を誘発するおそれがある」というのが、表現の自由や法の下の平等に反するかという点と言われています。記者会見で代理人の先生も話していましたが、元からこの訴訟は相当厳しいです。法律(改正特措法)に則って出された命令ですから、根拠となる法律自体が違憲で無効というか、法律自体は有効だけれども命令がおかしいというかしかありません。

前者はさすがに厳しいでしょうから、後者が主戦場になりますが、同社は時短要請に従わないことをSNSで積極的に発信するなど非常に目立っていましたし、自治体としても、マンパワー的に、時短要請に従わない店舗に対して一斉に命令を出すのは不可能です。

 

まず、グループとして要請に従わない「目立つ」同社の店舗を最初に命令の対象とした、というのはおかしくないと思います。もちろん、このあとどの飲食店に対しても命令を出さないといった状況であれば別ですが、報道によれば、東京都は、時短に従わない店には、粛々と、要請→命令→過料という手続きを執っているそうです。

 

したがって、本件は元々相当厳しい訴訟なのですが、こういった訴訟は、政策形成訴訟と言われていて、とりあえず社会の耳目を集めて、問題提起すること自体に意味があります。公害とか消費者被害などですね。規模に関わらず一律支給だった協力金も、今後は売上に応じて変わることになりましたし、声を上げていくことは本当に重要です。

 

ちなみに、私も、ある進歩的な新聞からこの件の取材を受けたのですが、都に対してめちゃくちゃ批判的な弁護士として紹介されました(笑)

 

グルメ弁護士のつぶやき

グローバルさん、大箱ばかりなので本当に厳しいはずです。売上100億で15億赤字出したそうですから。。。

コロナの発生から1年も経って、未だに「時短」と「マスク会食」なんて絵に描いた餅で対策しようとしている行政に憤慨する気持ちは分かります。だったら、「一人客はOK」「パーティションと2メートル隔離している店はOK」とか合理的な基準を設けて、設備への補助金も出す。設備投資できる店は営業、そうでない店は協力金で完全休業、とやった方が、ずっと経済効率いいと思いますが・・・まあこのくらいで止めておきます。                      (2021年4月5日 文責:石﨑 冬貴)