懲戒処分で困らないために(2)有効な懲戒処分の2条件
前回から引続き、懲戒処分をテーマにお話をいたします。
さて、懲戒処分が有効とされるには、2つの条件があります。
①懲戒処分について就業規則等で定められていること、②労働者の問題行為と、それに対して科された懲戒処分とのバランスが取れていることです。②は次回以降で掘り下げるので、今回はまず①について解説します。
まず、なぜ懲戒処分について定められていることが求められるのでしょうか。
懲戒処分は、労働者によるルール違反に対するペナルティといえます。すると、そのルールとペナルティについては労使が合意していて、かつ明確に定められている必要があるといえるでしょう。知らない間にルールが決められていて、一方的にペナルティを科されたのでは、誰も納得できないということですね。
実際に判例は、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要する」(フジ興産事件)と述べています。ここでいう「事由」というのが、どのような行為が罰せられるかというルール、「懲戒の種類」というのが、どのような処分が科せられるかというペナルティといえるでしょう。
また、この定めを「労働者に周知させる…ことを要する」と、同判例は述べています。定めを、いつでも確認できる状態にしておきなさいということですね。
この判例の事案では、労働者は会社の取引先からの注文にきちんと応じずにトラブルを起こしたり、上司に向かって暴言を吐くなどの問題行動を起こしていました。こんな人が会社にいたのでは大変ですから、会社はこの労働者を懲戒解雇します。普通に考えると、そんなの当然だ、と思いますよね。ですが最高裁は、懲戒処分について就業規則に定めて周知されていなかったという理由で、この懲戒解雇を有効とはしませんでした。
懲戒処分については明確に定めて周知すること、皆さんもご留意ください。
Atty’s chat
いまさらながら免許を取ろうと、高校生や大学生に混じって教習所に通っています。指導員曰く、コロナで公共交通機関を避けようと免許取得希望者が増え、教習所は大繁盛とのことです。クラッチの繋ぎ方に苦戦して、指導員や免許持ちの知人などに聞いたりしましたが、結果的に一番身になるアドバイスをくれたのは、一緒に教習を受けていた教習生の子でした。私と同じ目線からのアドバイスで、とても分かりやすかったです。法的アドバイスをする身として、とても気づかされるところがありました。 (2021年3月29日 文責:越田洋介)
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