民法改正が企業経営に与える影響 第10回 「意思能力」?

今回は、あらゆる法律的な行為の根本にかかわる「意思能力」のお話をさせていただければと思います。

 「意思能力」などというと仰々しいですが、要するに、「法律的行為に関して、しっかりと自分の意思を持つことのできる能力」のことを言います。
具体例としてわかりやすいのは、例えば赤ちゃんや泥酔者は、この意思能力が無いとされています。そして、意思能力がない者が行った法律的行為は、無効となります。

 

例えば、ようやく言葉を話せるようになったばかりの赤ちゃんが「1000万円あげるよ」と言っても無効ですし、泥酔 者が酒場で仲良くなった人に「お前が気に入った、俺の全財産をやるよ!」と言っても無効です。

 

ただこういった行為が「無効」となるというルールは、なんと法律に書かれていたわけではなく、あくまでそういう裁判例の蓄積があったに過ぎないのです。「こういう行為は無効だ!」と裁判までやって争ってきた方たちがいるからこそ確立されてきたルールなのですね。(ルールを作り上げてきた方々には本当に頭が下がります。)

そしてついに今回の民法改正で、「こういう行為は無効」と、バシッと明文化されたわけです。ルール自体はこれまで通りですので実際に世の中が大きく変わるわけではありません。ただ経営者の皆様の立場で考えると、例えば金融機関から融資を受ける際の意思確認が少し厳しくなっていく可能性はあるのかと思います。

 

金融機関からしても、お金を貸した後になって、まさか「あの時は精神疾患の状態が悪かったため無効だ」とか「顔には出ていなかったけど泥酔していたから無効だ」などと言われたらたまったものではないからです。(「そんなことあるか!」と思ってしまいますが、法律の世界では結構「信じられないような事」が起こるのですね。。)

 

皆様に限っては当然そのようなことはないと思いますが、もし今後金融機関からの意思確認がしつこくなったなとお感じになったら「ああ、意思能力に関する法律が明文化されたからだな」と、心の中でニヤリとしていただければと思います。

 

弁護士の徒然草

子供の頃はあまり好きではなかったのに、歳を取って好きになった食べ物って、皆様はありますか?私は最近「ミョウガ」の美味しさに気付きました。
子供の頃は、祖母が「美味しい美味しい」と言って食べていて、しかも家庭菜園までしているのを見て「苦くてグニグニで何が美味しいんだろう。。」と思っていた記憶があります。ただ、大人になってから食べてみたら、「味わい深い長ネギ」のような感じで、とても美味しいですね。煮ても焼いても美味しいですし、(しかもよく見ると色合いもお洒落で(笑))、万能食材のような気がいたします!                                                             (2021年3月15日 文責:佐山 洸二郎)