民法改正が企業経営に与える影響 第9回  お金の貸し借りのルールが変わった?

今回は「消費貸借契約」のお話をさせていただければと思います。日常生活では「消費貸借」などという言葉を使うことは、あまり無いですよね。

要するに、借りた物を、一旦使った上で(消費した上で)、後で同じものを返せば良いという契約になります。
やはり一番イメージしやすいのは、お金の貸し借りですよね。小難しく言うと「金銭消費貸借契約」となりますが、借りたお金を一旦使った上で後で返すというわけなので、まさに消費貸借契約ということになるのです。

この消費貸借契約ですが、改正前の民法ではヘンテコなルールが残っていました。

契約はお互いの合意さえあれば成立するというのが法律の大原則なのですが、なぜか消費貸借契約については「物が実際に渡された時点で初めて契約が成立する」という謎のルールがあったのです。

 

このようなルールだと、例えば実際にお金の貸し借りの契約書を作ったとしても、借りる側は、なんと「契約に従ってお金を渡してくれ」と言えないのです。「お金が渡されたまさにその瞬間に契約が成立するのだから、その前はまだ契約が成立していないから」という理屈になるのです。「な、なんだそれは……。」という感じですよね。。

このヘンテコルールは学者からも疑問が出されていて、民法の教科書にも「このルールに必然性はない」などと皮肉めいたことを書かれていたのです。

 

そしてついに今回の民法改正では、「契約書が作られた時点で契約は成立している」というルールになりましたので、先ほどのようなイビツな事態は防げることとなったのです。

なお、わざわざ「契約書」を作らなかったとしても、例えばメールなどでお互いの合意がなされていれば、同じく契約は成立したということになります。

民法改正により、これまでのヘンテコルールが色々と改善され、不要なトラブルが減るのは本当に良いことですね!

 

弁護士の徒然草

まだまだコロナ禍は続いてしまいそうですね。緊急事態宣言も延長となる可能性が高そうです。ただ明るいニュースとしては、ワクチンの開発がどんどん進んで、いよいよ日本でも使える日が近付いてきているようです。開発者の皆様には、本当に頭が下がります。。未知のウイルスに対抗できるワクチンを開発できるなんて、本当に格好良いです。こういう開発者の皆様によって世の中が良くなっていると思うと、私も法律面から少しでも世の中の皆様のお役に立てるように頑張らねばと気が引き締まる思いです。                                                                            (2021年2月1日 文責:佐山 洸二郎)